12月家族会報告
参加者は22家族24名。初参加は4家族4名でした。
スタッフのトシさんより、3年前に入所者3名からスタートした相模原ダルクは現在入院中を含めて入所者36名に達していることが報告されました。年明けの1月には2名が入所予定です。今後、40~50名に増えて行くのも間近だろう、とのことです。
今回は、病後のポールさん(相模原ダルクプログラムディレクター)に代わり、精神保健福祉士のサトコさんがセミナー講師として話されました。4月家族会での「家族のかかわり方…家族の3本柱」のおさらいをしながら、パワーポイント(画面表示)を使って解り易く説明されました。また、コミュニケ―ションスキル(意志疎通の技能)を身に付けて行く為に、二人一組になって具体的な会話の練習を行うなど、実践的な内容でした。
ポールさん
Stigma(スティグマ=烙印を押す)と言う言葉について。アメリカでは十代からマリファナを体験している若者が多い。アメリカだから、と思っていた。そうではなかった。親が、先生が、周りの大人が、マリファナを吸った若者に対して、「駄目な奴!」と烙印を押す。それを幾度も繰り返される。本人も「自分は駄目な奴!」と思い込み、耳を塞ぎ、人の話しを聴かなくなってしまう。“クラフト”で学んだ。「私は…」で話し掛ける練習を積み、そして本人に話し掛けた。そうすると、スーッと本人の耳に入っていった。
サトコさん
依存症は回復出来る病気です。十代、二十代の子が依存症によって人生を棒に振ってしまわないためにお手伝いしたい。彼らは、正しい治療を受ければ社会に戻っていくことが出来ます。以前より生き生きとして! その為には家族のかかわり方が大事です。先ず、依存症に巻き込まれた家族自身の治療が必要です。家族の変化、それが本人の回復にとって大事なのです。
(以下は、セミナーの資料を引用しながら、「適切な対応法と実践」を中心にまとめました。)
家族の3本柱
1.依存症という病気について正しく理解する。
・進行性の病気です。どんどん悪くなり、今までと違う人間に見えて来ます。
・慢性の病気です。慢性の他の病気と同じように、再発を防止して回復出来ます。
・死に至る病気です。依存症は放っておくと、自殺に至る確率が非常に高い病気です。薬や酒によって、精神的に、より強く追い詰められてしまう為です。その前に介入して治療に繋げます。
一時の安堵感や快楽の為に使い始めたのに、使い続けて行く中で脳に耐性が生まれ、陶酔感の後には以前の普通の状態には戻れない。反対側の苦痛の状態にまで行ってしまう。その苦痛を和らげようと連続使用になっていく。ダルクなどの回復支援施設に繋がった時には既に苦痛の真っ只中に居ます。止めても苦痛の中に居る状態。
家族はここを理解する必要が有ります。止めても直ぐには普通の状態に戻れません。
家族は、何とか止めて欲しいと思い、小言、泣きごと、懇願、怒り、脅し、そして隠す、捨てる、と言う行動に出ます。しかし、何の効果も無い。家族も又、依存症と言う病気に巻き込まれて行きます。家族の落とし穴、それは「効果の無い行動」に無自覚にのめり込んでいってしまうことです。そして、「救済者」→「迫害者」→「犠牲者」を繰り返していくことになります。家族の行動パターンです。
2.適切な対応法を学び、実践する。(効果の無いことを止め、効果的なことをやる。)
・コミュニケーションの改善
・イネーブリングを止める。
・本人に治療を勧める方法。
(ここで、二人一組になって、効果的なコミュニケーションスキルを身に付けていく為の練習に入りました。)
コミュニケーションの改善
練習① 「私」を主語にして言う
あんた、また隠れて飲んだでしょ!
↓
何か私、「隠れて飲んでるんじゃないかなぁ」て、思ってしまうんだけど、どう思う?
練習② 簡潔に話す
どうしていつも仕事が終わってすぐに帰ってこれないの? 毎日毎日飲みに行って…。こっちは毎日心配しているのよ! 昔は飲みに行っても12時までには帰ってきたのに。遅くなるなら、遅くなるって電話くらい出来ないの? 家のことは頭に無いの?
↓
飲みに行くのを少し減らしてもらえないかしら? そうしてくれたら、私、心配しなくて済むんだけど。(そうしてくれたら、嬉しいんだけど。)
練習③ 肯定的な言い方
また、通院さぼったの? まじめに通院しなかったら、また、いつか酒を飲んでしまうわよ。(耳を塞がれてしまう。)
↓
通院を続けていると、飲まないでいられる人が多いらしいわよ。(耳を開けてもらう。)
練習④ 具体的に話す
休みの日くらい、何か父親らしいことしたらどうなの?(カッとなり、話しが続かない。)
↓
今度の休みの日に、子どもたちを公園に遊びに連れて行ってくれたら嬉しいな。
練習⑤ 自分の感情に名前を付ける
あなたは、人の気持ちが分からないの? 私がどんな気持ちで毎日毎日夜遅くまで起きて、あなたのこと待っているか分かる?
↓
私は、毎晩遅くまで一人であなたの帰りを待っているのがとても寂しいの。それに、とても心配なのよ。
練習⑥ 支援を申し出る
黙っているだけじゃ分からないわ。何かあったのなら、言えばいいじゃない。イライラして部屋に閉じ込められても困ってしまうわ。
↓
どうしたの? 何かあるなら、話しを聞くよ。何か、お母さんに協力出来ることがあったら言ってね。(強制ではなく提案する形で、余韻を残す言い方で。「今日のお母さんはいつもと違うな」 これが、治療のきっかけになる大事なポイント。)
イネーブリングを止める
・イネーブリングとは?
本人の為を思って、何とか依存行為(飲酒、ギャンブル、薬物…)を止めさせたり減らしたりしてもらおうとしているつもりが、結局は本人の依存行動を支えてしまう行動のことを「イネーブリング」と言います。
・なぜ、イネーブリングがいけないの?
イネーブリングを続けていると、本人も家族も問題が見えなくなってしまいます。その結果、問題は解決されないどころか、ドンドン深刻化し、本人の病気を悪化させていってしまいます。
(家族が代わりに借金を返したり、代わりに欠勤の電話を入れたり、代わりに謝ったりするだけではなく、相手のウソや問題行動をそのままにしておくなど、「それ位は大したこと無い。そこまで酷くは無い。」と過小評価して、現実を見ないままにしてしまうこともイネーブリングです。)
イネーブリングの代替案
・小言、説教、叱責(どうして分からないの! もう、いい加減にして頂戴!)
→ コミュニケーションスキルを使って、相手に自分の思いを伝える。
・世話焼き(二日酔いなのに、無断欠勤で解雇されてはと、「風邪で休む」と電話。)
→ 「ごめんなさいね、もうあなたの代わりに会社に電話するのは、かえってあなたの為にならないと分かったの。悪いけど休む時は自分で電話してね。」と言う。
・実行しない脅し(もう口をきかない! 離婚する!)
→ ①実際に行動する。②自分の本当の思いを相手に伝える努力をする。
「あなたのお酒のことで私はもう限界なの。もう、酔ってトラブルを起こしてほしくないのよ。一度きちんと話し合いたいのだけど、どうかしら?」
本人に治療を勧める方法
・タイミング:本人の動機が高まっている時
①本人が依存行動に関する重大な問題を起こして後悔している時。
②本人が自分の依存行動について予想外のことを言われ、動揺している時。
③家族が相談に行っていることや、家族会について相手が質問してきた時。
④あなたの最近の変化について相手が質問してきた時。
(飲酒運手による事故、孫に「お爺ちゃん、お口が臭い。」と言われた時、こっちに意識が向いてきている時など。)
・いくつかのコツ
①相談を“試してみる”という誘い方をする。
②依存症以外のどんなことでも相談してよいと伝える。
(眠れない、イライラするなど、本人の気にしているところから繋げて行く。「相談に行こう。こんな方法もあるよ。どぉ? 一度試してみる?」 強く引っ張らない。)
3.家族自身の心身の健康の維持
家族の生活の質を改善する。
・家族が自分自身のことを正当に評価する。(頑張ってきた! 努力してきた!)
・家族が楽になっていい。(家族は家族!)
・家族が元気じゃないと良い手も浮かばない。(ポジティブな考え!)
・共倒れが最悪の結果。(これだけは避けたい!)
本人が治療に繋がったからと安心して、病院や施設にお任せではいけません。病気に巻き込まれていた家族も、依存症の二次被害で考え方や生き方が病んでしまっています。依存症者に振り回されて疲れた心と体を癒しながら、家族は本人とは別に、家族のプログラムに取り組まなければなりません。家族がそれを怠ると、飲酒、ギャンブル、薬物を止めた本人を、家族がスリップに繋げてしまうことがあるのです。(家族のたった一言、「あんた! 今日は何で帰りが遅くなったの!」で、本人にはスリップのスイッチが入ってしまうのです。)
今回の家族会も、予定を1時間以上延ばして行いました。 (家族会世話人 広瀬)
献金へのご協力のお願い
この度、相模原ダルクは相模原市内のデイケアセンターの近くに、新たに一戸建てを借りることになりました。増え続ける入所希望の声に応えるためです。契約、運営のために約50万円の資金を必要としています。田中秀泰代表より、家族会に献金の協力依頼がありました。前回の町田寮開設資金への献金の協力に引き続き、家族会はこの協力依頼に再び応えて行きたいと思います。同時に、病院や行政の関係者の方々にも、家族会より献金のご協力を呼び掛けたいと思います。
今年の始め、相模原ダルクの町田寮の新設にあたり、私たち家族会は二度にわたり献金に応えました。献金の総額は、32万5千円に上りました。それから1年。今、相模原ダルクには36名の入所者が居ます。皆、日々の依存症治療に取り組み、回復のためのプログラムに繋がっています。
田中代表は、「まだまだ多くの依存症に苦しむ人たちの家族が、本人の入所を希望して相談に訪れています。もっともっと多くの人たちを入所させたい。ただ、今の施設をぎゅうぎゅうにはさせたくない。」との強い思いです。
相模原ダルクは、3年前、相模湖近くに一戸建てを借りて、入所者3名からスタートしました。相模湖リカバリーセンター、相模原デイケアセンター、町田リカバリーセンターに引き続き、新たなリカバリーセンターを新設しようとしています。今回の一戸建ては、相模原ダルクのこれまでの活動に賛同していただいた地域の方から紹介していただいたものです。
私たち家族会の一人一人には、痛いほど解ります。今、ダルクへの入所を求めて相談に訪れて来られているご家族の気持ちが。私たち家族もまた、長い間に亘って、本人の依存症と言う病気に巻き込まれてきました。幾度も裏切られ、身も心も傷つき、財産を失い、孤立を深めていました。自分の子供が、兄弟が、夫が、ダルクに入所し、私たち家族は、家族会でのセミナー、ミーティングを積み重ねて来ました。ようやく自分自身の人生を見つめ直し、新たな人生を歩み始めることが出来ました。本人とともに、家族自身の心の回復を得ることが出来ています。
今回、新たな一戸建ての契約、運営のための資金協力への献金のご協力を、家族会の皆様を始め、病院、行政の関係者の方々に呼び掛けさせていいただくに当たり、家族会は、これまでの一年余の活動に引き続き、今後も多くの関係者の方々と力を合わせながら、依存症に苦しむ人たちの依存症からの回復のための支援活動を進めて行くことをお伝えします。是非、献金の趣旨をご理解いただき、多くの方々に献金していただけるよう、心からお願い申し上げます。
相模原ダルク家族会世話人 広瀬昌之
記
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