<2022年7月家族会報告>

7月16日(土)1時半~5時 29名参加(22家族) 初参加4名(3家族)

講師:水澤都加佐先生 (HRI横浜カウンセリングオフィス)

印刷資料「依存症という慢性疾患への対応の仕方」p9

 

私は横浜の事務所で仕事をしており、月2回こちらにきておりますが、そのほかに毎月1週間福岡の病院で仕事をしております。倉光病院は依存症を治療している病院です。さて病院に依存症で入院している患者さんにこういう質問をします。「依存症で、酒や薬物やギャンブルでひどい目に遭ったと思う方はおられますか?」どのくらいの患者さんが手をお上げになると思いますか?入院した人ですよ、自分がアルコールや薬物で酷い目にあったと自覚して手を上げる人がどのくらいでしょう?三分の一だけです。あとの三分の二は思ってないです。ここはとても大事な点です。常識的に考えて、三か月入院しなければならなくなったとしたら、大変な事ですよね。交通事故で3か月の入院と言ったらどのくらいの怪我でしょう。内臓の病気で三か月入院といったら大変ですね。依存症でも3か月入院といったら大変だと、普通は思いますよね、でも酷い目に遭ったと思っていない方が三分の二いらっしゃる。何故だと思いますか?皆さまの大切なご家族はどうでしょうか?その理由を最初にお話ししておきましょう。

依存症の方は記憶に障害があります。特にアルコールの方は記憶力が著しく落ちています。思い出せない、覚えられない、考えられない、集中できないというのは、一か月や二か月ではないんですね。依存症者の記憶力はあいまいなんです。酔っぱらっていたから覚えていないというのは、依存症でない方でもあります。依存症の方は何年にもわたって大量に飲んでいますので、記憶力が非常に弱くなっている。これが正常な記憶力に戻るのにどれくらいかかると思いますか?半年くらいで戻る人もいますが、二年ぐらいかかることが普通です。

もう一つの理由は、困らないで済むようになってきちゃっているのです。この辺はご家族とも関係あります。「お金がない」「今回だけよ」というやり取りを何回やりましたか?配偶者が依存症の場合「今度やったら離婚だからね」と何回言いましたか?要するにご本人が色々な形で追い詰められないで済むように、愛情があるために、本当はやらない方がいいことを一生懸命おやりになるご家族が多いですね。死なれちゃ困りますし。刑務所に入られるのも困りますし。借金取りに追いかけられるのも困りますし。隣の家の人なら関与しないのに、自分の家の家族だとそうならないようにと、ご家族は追い詰められるんですね。そういう事でご本人が困らないですんでいるというのが、二つ目の理由です。

三つめは、欲求があるんですよ、お酒飲みたいという。薬をやりたい欲求、ギャンブルをやりたい欲求、これが結構長くあるんですね。患者さんに毒薬とアルコールを示したとします。どっちを飲みたいかと聞いたら、お酒を示しますよね。死ぬのは嫌だから。ですが、アルコールで命を落とす人は非常に多いです。体を悪くしますから、救急車で運ばれて助かる方も多くいます。ギャンブルの方はお金を返せない、どうやって生活しよう、そのような段階で救急車呼べますか?財布は空っぽ、借金を返せない、誰も援助してくれない、119番しても病院に運んでくれませんよね。アルコール依存症者の方も自殺しますけど、ギャンブルの方は4倍くらい自殺率が高いです。アルコールの方は救急車呼べます。ですが腹水がたまってお腹ぽんぽこりんになって、飲まなきゃ苦しいのに、飲めば吐くという状態になった患者さんがいました。ここでアルコールを体に入れないと離脱、禁断症状が出ます。どうにかしてアルコールを入れたいのです。どうしたと思いますか?なんとウィスキーのボトルを、肛門に差し込んで、そこからしみこませる形でアルコールを体に入れたのです。そこまで行くんです依存症というのは。今その人はちゃんとお酒やめて生きていますけどね。問題を整理します。記憶があいまい。追い詰められた感覚をもたないですむように関わっている方がいる。欲求がある。この裏側には離脱症状があります。

四つ目は否認です。認めないこと。依存症の大きな特徴は否認です。「確かに借金はしたけど、何とか出来る範囲だ」「酒だの薬物だのギャンブルだの、あんなの何時でも止められる」そうでしょうか?私たち体調が悪くなって病院に行きますね。診察されます。診断基準があって「あなたは何々病です」と言われます。「こう治療しましょう」と言われます。嬉しくはないけど従いますよね。私はメニエール病があって、救急車で4回運ばれたことがあります。他に高血圧、痛風もあります。私はこれらの診断をそのまま受け入れて、毎朝薬のんでいますから、日常生活全く問題ありません。私は病名も治療方針もそのまま受け入れます。治療者のはしくれですが、ちゃんと治療方針を守っています。ところが依存症の方は、まず診断をそのまま受け入れません。「そんなことはない、あんなものいつでもやめられる」「自分には自分の考えがある」「放っておいてくれ大きなお世話だ」「病院行かない、ダルクに行かない、俺のやり方でやる」こういう病気って珍しくないですか?癌があると言われて、そんなはずはないと、違う医者を転々とする人はいます。そのうち癌には認めるようになり、治療方法をいろいろ探すことはある。依存症は診断名も治療方針も、受け入れるようになるまで何年もかかるのです。多くの依存症者が「俺は俺のやり方がある、私には私の考えがある」といって受け付けない。自己中です。そして自分依存なんです。あの方は、皆さんのお子さんかもしれません、ご兄弟かもしれません、親御さんかもしれません。なかなかいうことを聞いてくれなかったと思います。いつでもやめられると言いますが、ウソです。

 

ここから資料に入ります。1ページめ。依存症とは「いくつかの要因によって引き起こされる慢性的で進行性の一時疾患。遺伝的な要因が40~60%占めるといわれる。」依存症の特徴として「依存対象へのコントロールを失う」止めなければいけない事がコントロールできなくなります。「依存対象に強迫的に囚われる」ほどほどにできない。囚われてしまう。「悪い結末にもかかわらずやめられない」仕事できなくなる、入院しなきゃならない、離婚したいと言われた、といったことになれば普通はやめますが、やめられない。これは病気だからです。「考え方がゆがむ」さっき言った否認です。否認とは認めない事です。なんでもいいから言い訳にします。話題をすり替えることもあります。「認めない、言い訳、話題のすり替え」。これが病気の本質です。

「楽しみから苦痛への変化」は沢山書いてありますからお読みになって下さい。大事なのは、「脳内ホルモン『ドーパミン』の分泌量」です。普通の状態ではこのドーパミン分泌量はこのレベルだとします。これがある程度出てくれているから私たちは今日ダルクに来る事ができました。「脳内ホルモンのドーパミン」が普通だからです。それが出来ない場合もあるでしょう、朝起きるのも食事もできない話もしたくない、そんな状態になったことありませんか?鬱になって落ち込むとこの程度に下がります。日常生活で最高だと思う良い事があった時に、ドーパミンは60%分泌が増加します。ところがお酒でどれくらいドーパミン分泌が増えるかというと300%です。約5倍。ギャンブルは1000%です。覚醒剤も1000%。ゲームだと175%だと言われます。お金をかけてないギャンブルではないゲームでこの値です。セックスで200%。甘い物は(さとうきび、メープルシロップなど)130%。人工甘味料の数値はまだ見つからないですがもっと強いです。依存症とはドーパミンに嵌ることなんです。だから50~60%の物には嵌りにくいですね。圧倒的に大量に分泌するドーパミンによる高揚感にはまっちゃう病気なんです。

最初のうちはこれに酔っていられます。ところが時間がたつと、アルコールや薬物には耐性があります。だんだん効き目が悪くなります。鎮痛剤でよくありますね、最初2錠で聞いたものが3錠4錠飲まないと効かなくなったというような場合、耐性がついたといいます。アルコールや薬物には耐性がつきます。量を増やさないと同じ効果が得られない。そしてこのドーパミンも、ホルモンなんですけど、耐性がつくのです。ギャンブルだとだんだん回数がふえ、金額が増えます。アルコールや薬物などは化学物質そのものに耐性がつくのと、ドーパミンにも耐性がつくのです。だからエスカレートするというのはおわかりになりますよね。問題は、これが醒めた時に、ズドンと落ちるんです。どんなに盛り上がっても鬱に落ちこんでしまう。鬱、普通、高揚感の線があります。体から抜ける時に鬱になり、これはすごく嫌な物なのです。先ほどの肛門にウィスキーの話のように、そこまでしないと鬱から抜け出られないわけです。ギャンブルも借金があろうがながろうが、とにかくそこに行かなければだめなんですね。これが依存症のメカニズムです。依存症は脳の病気です。

特に親御さんの立場の方は、親の育て方が間違っていたんじゃないかとか、思っちゃいますが、そんなことないです。依存症はいろんな要素でなるので。配偶者の立場の方は、妻として間違っていたんじゃないかとご主人の親から言われることがあります。そんなの関係ないです。親御さんの方、どういう風に育てたら我が子を依存症にできるんでしょうか?そんなことないです、みんな一生懸命育てているんですよ。だけど、一度このドーパミン高揚を体験しちゃうと一人歩きしちゃうんですよ。いろんな要素があります。まず遺伝の要素。40~60%と資料に書いてあります。家族に依存症者がいると必ず依存症になるのでしょうか?親が依存症なら子供も依存症となるなら、世の中依存症者だらけです。親の子育ての間違いで依存症になるなら、世の中依存症者だらけです。私の二人の娘はどちらも依存症ではありません。私の実の兄はアルコール依存症で46才で亡くなっているんですけど、私は依存症ではないです。

育て方の中に何かあるとすれば、子供の時の家族環境に安心感があるかどうか、愛情をちゃんともらったのかどうか、虐待がなかったかどうか、そういう事が無関係ではないと言われています。そういう環境にある人が人生のなかで依存物質に出会ったりすると、心地よくなるのがわかるので、ついついはまってしまうことはあるかもしれません。これは原因ではなく「関連性がある」と言います。職業にも関連性はあると言えます。営業をやっていればよくお酒をのむかもしれません。営業マンがみんな依存症になるかといえば、そんなことはないですよね。いろんな要素が重なって選抜された人が依存症になるのです。親の育て方だけではないのです、よろしいですか。そういうことでここにおいでの方は、自分を解放してあげて下さい。

 

二枚目の一番上に、アンヘドニアAnhedoniaとあります。無快楽症。快感喪失とも言います。酔いから醒めますと、ドーパミンレベルが高揚感から鬱の線まで落ちるんですね。これが普通の線まで戻るのに長い人は2年位かかります。速い人は半年くらいですが、普通1年くらいはかかります。酒飲まない薬打たない、ギャンブルやらなくて万引きもしなくなった、それなのにアンヘドニアが続きます。「世の中何も面白いことないよ。生きているのもめんどくさい。何やっても楽しくない。」こういう時期が半年から2年続きます。普通に戻るまで相当時間がかかるのです。その間に何が起こるか。再発が起こります。中には自殺を選ぶ人もいます。依存症の横滑りをする人もいます。「もう自分はギャンブルはやらない、でもお酒は依存症じゃないから楽しみ程度ならいいかな。」瞬く間に依存症になります。ギャンブルもアルコールもドーパミン分泌が多いですから。アルコールからギャンブルに横滑りする人もいます。四つ目は病院の処方薬を乱用して、中には処方薬の依存症になる人もいます。アンヘドニアの1年から2年の間に、こういうことが起きがちです。全員そうなるというわけではありません。

2枚目の後半。「アディクションに共通すること」アルコールであれ薬物であれ、ギャンブルであれ窃盗証であれ、共通する事です。「その行動に没頭することで嫌なことを忘れる。」楽になるという事です。「依存行動には即効性があるため、繰り返し同じ手段に頼るようになる」即効性があるから繰り返すんですね。依存症の方ほど嫌な気分に慣れない方は少ないですね。毎日楽しいことばかりじゃないですよね、物価は上がるしコロナは広がるし、中には仕事を失う人もいますよね。依存症でない人も毎日楽しく暮らしているわけではない。ですが依存症の方は特別イヤな気分を嫌います。即気分が変わる物を求めるんです。イヤな気分に慣れる必要があります。でもそれがとても苦手なんです。「繰り返すにつれより頻繁に、より激しくエスカレートする」耐性の上昇です。「自分を傷つけ、周囲の人も巻き込んで傷つける」始めは自己破壊的に、そのうち周りの人に対しても破壊的になります。「自分では問題を認めにくい」否認ですね。「適切な範囲に留めておこうとしても、自分ではコントロールできない」コントロール喪失なのに、自分は自分はで対処しようとして、それをずっと捨てきれない。…こういうことがあらゆる依存症の共通項です。

次のページはドーパミンの分泌量のリストです。さっきお話したとおりです。日常生活で最大限のレベルが60%アップなのに、依存物質や行為はとても高い事が分かります。これを体験してしまうと、病みつきになるのが依存症という病気です。

「回復と再発」依存症は回復します。回復の言葉の定義があります。「アルコールやその他の気分を変える薬物への身体的、精神的依存を克服して、生きるためにこれらの薬物の必要性や欲求を感ずる事なく、バランスが取れた生き方を身につけるプロセス。回復の過程で、その人の身体的、精神的な状態・有様が変わり、もはや幸福感や充実感を得るために、アルコールや薬物が不必要になる。」簡単にいえば生きるためにお酒や薬物やギャンブルが必要なくなる事です。再発もあります。「飲酒をする前に見られるかつての不健康な行動や思考のパターンに戻ること。そのままにしておくと、いずれ飲酒したり、薬物を使用してしまうことが多い。」再発はお酒や薬物をまたやっちゃった事だと思われるかもしれませんが、再発には段階があります。

「回復の段階」です。後半でご家族の回復の話をいたしますが、まずご本人の回復です。「第1、外的条件により断酒をする。」断薬も断ギャンブルも同じことです。外的条件とは、自分の外側のこと、仕事クビになっちゃ困るとか、家族に出て行かれると困るとか、外側の条件で本当は止めたくはないし、止める気はないのですが、「わかったよ、そこまで言うなら病院行ってやってもいいよ」。面白い言葉でしょ、誰のためなんでしょうね。それが治療が進んでいくと、「第2、内的条件により断酒をする」になります。自分のために自分でやめなきゃいけないんだ、となります。更に治療が進むと「第3、生きるために飲酒を必要としない」生きるために依存はいらなくなるんですね。そして「第4、回復を維持・発展させる」となります。皆様回復ってなんだと思います?よく「お酒や薬をやる前の、健康なあの人に戻ってほしい」という方がいます。それは間違いなんです。のめりこむ前のあの人に戻ったら、また依存を必要な人に戻ってしまいます。回復とは文字通りでは元に戻ることですが、戻ったらまた繰り返すだけでしょ。回復とは、一口でいうと成長することなのです。どういうことかというと、「嫌なことがあってコンチクショウと思う、でもだからと言って俺は酒はのまないよ、ギャンブルはしないよ、薬は使わなくても何とかなるよ」と考えられる人です。依存症でない人よりもすごいと思いません?悲しい事があったら昔は飲んでいたかもしれません。「だからって俺はのまない、しらふでかみしめるよ」どうでしょう、人間的成長そのものですね。前に戻ったらそのたびに飲んだり使ったりするかもしれません。回復とは成長ですよ。

 

ダルクには回復してスタッフになった方が何人もいますよ。その彼らに聞いてみて下さい。例えば悲しい事があったらどうやって乗り切りますか?(周りに人がたくさんいるので、助けてくれます。)チェッ頭に来たとか思うでしょ、そんなときどうします?(僕は相談します。良く愚痴を言ってます。)そういう事が出来るようになるのが回復です。依存症でないからみんな健康かと言えば、必ずしもそうでもないですね。依存症じゃないけど、頭来たらお皿割っちゃう方いません?ヤケ食いする方いません?お小遣い全部使っちゃうとか?そういう方より、依存症の回復者は、はるかに健康な人生を歩めるようになるのです。だから尊敬します。私は病院の仕事やっていますが、私が行っている病院・施設は医師も含めて全部で20人もの回復者スタッフがいます。一緒に仕事します。回復者がスタッフとして給料もらって働いています、男性も女性もいます。この人たちに、うまく生活している人の話にジェラシー起きませんか?と聞きますと、「この人いいわねって話を誰かにします」聞いてくれる友達がいるのです。「人に話して楽になります」といいます。お酒で楽になろうという気は全くないそうです。素晴らしいと思いません?回復は成長です、ただ止めただけの人達ではないという事です。だから私は回復者を尊敬しています。かなわないなと思う人がざらにいます。学歴でも資格でも知識でも役職でもない、この人にはかなわないなと感じさせる人が回復者にはたくさんいるのです。皆様のご家族は回復の段階に照らし合わせて、どの段階にいるのでしょうか?

「家族の回復の段階」。最初は「第1、あの人のために自分は頑張る」。これ普通の事ですね、家族として頑張らなきゃと思うんですね。残念なことに病気なので、ご家族では治せないのです。テーブルを一本指で持ち上げるような努力を何年も重ねると、疲れ果てますね。愛情があるからです。私の兄もアルコール依存症でしたから、母親が一生懸命やっていましたね。母親が9月に亡くなったら、兄の面倒見る人がいなくなり、11月に亡くなりました。怖い事ですね、早く自立させなければいけないですね。でも「あの人のために」ここからスタートする家族が圧倒的に多いです。

「第2、自分の課題に取り組もうとする」いくつかポイントがあり、家族が絶対やってほしくない事があります。まず可哀そうだと思って何かやってはいけません。ろくな結果になりません。依存症は慢性的で致命的な病気です。慢性病ですから医療の力が必要です。ご本人が自分の体を自己管理できなければ、何度でも再発するのです。実際に病院に5回も6回も入院繰り返す人はざらにいます。ご本人が自己管理できなければだめなのであって、家族が変わって差し上げる問題ではないです。第2段階でご家族もご自分の課題に気づきます。でも愛情があるからそうなったという点は捨てないでくださいね。ご家族の回復に戻ります。愛情のあることは忘れないでくださいね。愛情あるゆえに間違ったことをしたかもしれない。しかしご本人が自己管理できるように導かないといけない。ご家族の問題もここに出てきます。

 

「第3、自分の問題とあの人の問題との間に、境界を引けるようになる」

「第4、自分の回復を維持・発展させる」

(中略)

一番最後の資料「依存症からの回復に必要な10の自己管理上の課題。1金銭管理、2身体管理、3日常生活管理、4ストレス管理、5ネガティブな感情への対応、6危ない場所、危ない事、危ない人との関係に注意する、7飲酒やギャンブルをしたいという渇望感への対処、8何事も過剰にならないようにする、9通院、デイケア、服薬管理など、治療上の課題をしっかり守る事、10自助グループに通うこと(自分には依存症という致死的な慢性疾患があることを風化させないために)」

この10項目が出来ていないと再発します。自分で自己管理出来ない人は危ない。これはご家族の課題ではないです、ご本人様の課題。よろしいですね。これがどうしてもできない人は、ダルクのような集団生活の中でそれを身につけてほしいですね。大事なあの人であればこそです。患者さんは良く病院を退院するとまっすぐ家に帰りたいと言います。お気持ちはわかります。しかし家では自己管理が身につきません。ですから自己管理を出来ない方は、集団生活が絶対的に必要なのです。

(中略)

ご家族のジレンマはすごくわかります。刑務所にいるのは犯罪に対する罰としているのであって治療の場ではありません。ダルクのようにミーティングをやっている刑務所も結構あるんですけど、治療は刑務所を出てからになります。それをやらないで家に帰ってしまうと。ご家族の「病気のささやき」というのがあります。「刑務所で何年も苦労してきて、あなたの家族でしょう、なんで入れてあげないの、病人なのに可哀そうだよ」と。これは病気のささやきです。一方で本人にもささやきます。「もう刑務所に何年もいたんだからいいだろう。今度は上手にやろうよ、バレないように人に見られない所でやればいいんだから」と。ご家族にもご本人にも病気は巧みにささやいて、病気の思うとおりにしますので、上手く情に訴えるので、家族はついつい手を出してしまいがちです。ご家族向けの提案と逆のことをさせようとします。

 

こちらから質問したいことがあります。病気のご本人様が、「早く死んでくれたらいいと思ったことが、一回でもある方」。いやな質問ごめんなさいね、二つ目は「依存症のあの人に殺意を感じた事がある方。」三つ目の質問「自分の方が先に死んじゃいたいと思ったことがある方」。こんなにたくさんいらっしゃるんですね、ありがとうございます。これが病気のパワーです。家族をこんなに痛めつけるんですね。依存症は病気であるにもかかわらず、周りの人にとって、その人に殺意を持たせます。あの人が癌だったらどうしますか?糖尿病だったらどうですか?そんなことないでしょう。依存症はそれほどまでに破壊的なパワーを、本人にも家族にも振るうのです。家族も破壊的になってしまう病気なのです。しかし依存症は回復できる病気です。ちゃんとやりさえすれば。病院とを退院する時や刑務所を出ると言った節目の時、ご家族としての判断をお誤りにならないようにとお願いします。

私の兄は46で亡くなりました。ちょっと具合悪いので家によってくれよと言いました。そんな電話受けたのは初めてだったので、びっくりしました。しかしアルコールですから、飲んで具合悪くなるのは何十回も繰り返しています。わかった、と言って、3日目に行ったらもう固まっていましたね。一応救急車を呼びました、家族に内科医もいたので司法解剖にはなりませんでしたけど。母親が亡くなってたった2か月しか持たなかったです。何回も母親には言ったのです、いろんな本も読ませました。でも行動は全く変わらなかったです。尻ぬぐい後始末ばっかり一生懸命やっていました。家族に医療者や治療者がいても、感情が出て客観視できなくなります。お客様なら客観的に冷静に関われますが、家族となると冷静には関われません。依存症はややこしい病気です。病気のささやきに家族も苦しめられます。ぜひお気を付けになって下さい。大事なことはあの人が病気だという事です。病気が問題なのであって、あの人が問題なのではないということです。医療と自己管理で回復していく病気なのです。

文責:伊藤