<6月家族会の報告>

30年6月16日 午後1時半~5時 20名(16家族)参加

講師:サトコさん(障害者就業・生活支援センター、PSW)

 

高澤 本日代表は、メンバーと共に山梨にある「グレイスロード(ギャンブル依存症回復施設)3周年感謝フォーラム」に行っております。2点お知らせです。まず家族会の日程で、9月15日が22日へ1週ずれます。というのは来月の家族会講師でお招きしております水澤先生の主催する、ワークショップがありまして、そこに代表はじめ私ども職員が参加するからです。米国から二人の専門家が来日して行うワークショップですが貴重な機会です、前号のニュースレターにチラシを同封して送りましたので、ご覧ください。次に黄色い表紙の「ひまわり通信10号」が後ろのテーブルに置いてありますが、横浜ひまわり家族会のイベントに、田中代表も出席します。8月26日南公会堂で<第2回薬物依存症と家族フォーラム>が行われます。トークセッションの部に田中代表が登場しますので、よろしかったらご参加下さい。その際はぜひ「相模原ダルクから来た」と受付にお伝え下さいとのことです。

 

サトコさん 「依存症者をもつ家族に対する支援介入」(パワーポイントと印刷資料を使用)

まずは肩の力をぬきましょう。隣同士2,3人でグループになって下さい。簡単に自己紹介しましょう。それから「最近のマイブーム」と言うテーマで少しお話して下さい。

「依存症者と家族の陥りやすい関係」ですが、本人は依存症にのめり込みます、並行して家族は疲れていきます。本人は思考のコントロールができない、自己中心的、感情的、すぐ怒る、自暴自棄、別の人格がいるみたいになります。家族は感情に流される、感情をぶつける、すぐ絶望する、ちょっとのことで期待する、不安になる、頭の中のほとんどを本人のことが占めるようになっていきます。お互いの関係が反発・暴力・見ざる聞かざる話すざるの三猿状態となります。そして家族機能は低下ないし崩壊していきます。

「依存症について正しく理解する」必要があります。進行性の病気であり、慢性の病気であり、死に至る病気なのです。慢性病というのは高血圧や糖尿病のようなもので、完全に治ることはないけれど適切に対応すれば普通の人のように生活することができるのです。しかし治療しなければ自殺に至る確率が高いのです。

「依存症からの回復の取り組み」には、施設で行われる勉強会、共同生活、ミーティングがとても有効です。勉強会で自分の病気について学ぶと、自分の異常な行動は病気がさせていたものだとわかり、気持ちが楽になります。生活の乱れは睡眠、食事、身だしなみ等あらゆる面でひどくなっていますが、頭でわかっても治りません、体で治す必要があり、それには共同生活がとても有効です。そしてミーティングは、グループセラピーとも呼ばれますが、毎日自助グループに参加することで自分の癒しになります。またスポンサーシップを取ることで、人間関係の練習ができます。AAでは「足の裏に脳みそがある」といいます。どれだけ歩いて人に会うかが回復のカギだ、という意味です。

さて「家族の基本的な対応」について。本人が治療の場に登場していない場合は、まず認識を変える必要があります。対応を変える必要があります。そして暴力の加害者・被害者にならないことです。家族は病気の人をコントロールできませんし、本人が変わる気にならないと治療は始まりません。ぜひ病院や治療施設につなげて下さい。対応を変えて、本人の依存行為に関わらない、心理的距離を保つことも大事。暴力は避けて下さい、身辺が危険になったらSOSを出して、事件にならない様に気を付けて下さいね。

では本人が治療の場に登場してからの「家族の基本的な対応」とは。スリップに巻き込まれないで下さい。自助グループに通う事を勧めて下さい。過度な期待はしないこと、回復は一筋縄ではいきませんので。本人の治療は本人に、家族は自分のケアをして下さい。本人は「帰りたい病」が出ますので、未治療のまま家に受け入れてはいけない。手を出さない、口を出さない、お金を出さないといことです。

今日のポイントは「コミュニケーションを見直す」ことです。依存症者と家族の関係はとても混乱しています。思い込みや期待を白紙にしましょう。「あなたはどう思う?」と聞いてあげてください。「今ここで」の話に限定しましょう、過去の話を蒸し返さない。そのようにすると、提案や気持ちが本人に届きやすくなります。上手に治療につなげることができます。

効果的なコミュニケーションスキルガイドをまとめました。①私を主語にして話す。②簡潔に話す。③肯定的に話す。④具体的に話す。⑤自分の感情に名前をつける。⑥思いやりのある言い方。⑦部分的に責任を引き受ける。⑧支援を申し出る。特に①②③が難しいですね。それぞれ例文を作りましたので、声に出して練習してみてください。頭でわかっていても、とっさの場合口から出てきません。ですから練習が必要なのです、役に立つのです。

家族にとって「イネーブリングをやめる事」が大事だと言われます。本人のためを思って何とかして依存行為を止めさせたり減らしたりしようとしている行為が、かえって依存行動を支えてしまう場合があります。これを続けていると、本人も家族も問題が見えなくなります。問題は解決されず、どんどん深刻化し、本人の病気を悪化させてしまうのです。CRAFTで使うイネーブリングチェックリストを2つ紹介しておきました。ぜひやってみて下さい。

最後に「薬物依存症者の家族の回復過程」を図式化しました。混乱→外に助けを求める→病気についての正しい知識をもつ→否認を解く→仲間を作り孤独感をなくす→適切な対応を身に付ける→本人への干渉を止め、自分自身の問題に取り組む→現実をみる勇気が持てる、新しい希望が生まれる→身体的、精神的変化が現れる。→新しい生き方への道が開ける、経済的安定へ一歩踏み出す。→回復。

ご家族も本人同様心の内圧が高くなっています。ガス抜きやケアが必要な状態になっています。ぜひゆとりを見つけて、楽になって下さい。そのためにも、家族以外の「社会資源」をぜひ活用しましょう。自助グループの他に、医療制度、健康管理、夫婦の問題、子供の問題、非行や犯罪、借金問題、いろいろな問題の専門機関がありますので、うまく利用して、回復していってください。

文責:伊藤