<4月家族会の報告>

30年4月21日 午後1時半~5時 25名(20家族)参加。初参加3名(3家族)

田中代表  神奈川には自然がいっぱいで、ダルクではこれから屋外プログラムが楽しみになります。神奈川にはまた、川崎と横浜にダルクがあり、協力関係にある病院も多数あり恵まれています。だからこそ縄張り意識を持たず透明性を高めて協力して行こうと考えています。というのは自分もいくつものダルクを経験して、良い人も見て悪い人もみて、様々な出会いの中でやっと回復できたのですから。

 

北里大学東病院 精神科医師 朝倉崇文先生

私は臨床研修医時代、精神に問題ある方の良く来る夜間救急に入り、アルコールや危険ドラッグの方に多く出会い、そこから依存症に興味もちました。北里東病院から相模原市の精神保健福祉センターで田中代表と会い、一時内閣官房で依存症に関する仕事に関わり、また北里東に戻り今も非常勤で相模原市精神保健福祉センターに関わっています。神奈川の西の方で依存症をみる病院が少ないので、拠点になれればと思っています。

依存症について。依存症と嗜癖とはほぼ同じですが、アディクションとはのめりこむ、止められないことですね。医学的にまだ病気と認められないものでほぼ確実なのはインターネット依存です。生活に困った事が起こる。困った理由を探したら、病気と考えたほうがいいとわかってきて医療の対象とする。そういうことが何度も繰り返されました。賭博しかりモルヒネしかり阿片しかり。特にアルコールは19世紀から大量生産できるようになってから社会問題化してきた。最初は厳罰化し、次に禁止する。しかし根本的治療はできません。禁酒法、覚せい剤取り締まり法、予防には意味があったが地下にもぐり闇組織を生むことになった。

どういう人が依存症になるのか。自己治療仮説があります。心の痛み止め説です。薬物で楽しいだけの人は止めやすいが、不快感情や生きづらさを抱えている人がやめにくい。使ってないとやってられない人、使うと嬉しいが増えるばかりでなく嫌なことが減る、そういう人が手放せなくなる。ストレスあればすぐ薬で消す癖がつくと、大したことないストレスでも使う癖がついてしまい、ますます止められない。

最初に治療ができるようになったのは、1935年から始まる自助グループAAです。アメリカでビルとボブの出会いがあり、お互いの体験を話したら飲む必要がなくなった。ここで万民とは言わないが、かなりの人に効果ある方法がみつかった。今では依存症だけではなく、摂食障害や買い物や、感情や生まれ育ちに関する自助グループもあります。12ステップは非常にうまくできています。こういうシステムが医療にも紹介されてきた。

家族のすべきこと➀。罪悪感をもたない。暴力や自殺企図への対応は、110番を躊躇してはいけない。親や身内との関係は一律に対処できないことだが、相談機関や医師に間に入ってもらうのが効果的かもしれない。離婚はできればしたくないが最後の手段として仕方ないこともある。そして本人に責任をもたせること。

本人に責任をもたせるために、戦略は最終的に本人に決めさせる。主体的に決めた場合、失敗したら本人が自分のプランが悪いと反省モードになり前進の可能性がある。受け身で決めて失敗した場合、周りのプランが悪いとして反省できず前進が見込めない。やめる意志をもつことは必要。しかし意志の強さに頼り、対策を立てないのでは成功しません。我慢は続かない。

家族のすべきこと➁。大事なことは、拒否されないケンカしない関係を作ること。非難しない、レッテルを貼らない、批評しないで傾聴する、自分の意見を押し付けない。また内在する治療動機を引き出す。アイメッセージで懸念を伝える。試みには褒める。引き金は解消するような方法をさぐる。理解してもらえるように短い言葉で伝える――これがなかなか難しいのですが。ポイントは拒否されないために非難・論争を避けることです。拒否されなければいつか介入できるかもしれない。「釣り堀から魚を逃さない、ホームランは狙わない」ともいいます。

大学病院でアディクションに対応するのは昭和医大と北里東くらいです。うちで依存症の教育入院はしてないが、暴れて連れてこられる人はいる。殆どは統合失調症や躁鬱病と合併です。院内の孤立感から自助グループにつながる人もいる。でもわからない集団に入るのは怖い、そのつなぎになるのが、プログラムや精神保健福祉センターかもしれない。認知行動療法をやるのは、人は気分がよいと、将来の見通しも立てやすい心理があるから。今この瞬間が楽しいというのはかなり大事です。

 

Q1 北里大では外来はかなり待つ。依存症本人が行く気になった時にチャンスを逃してはいけないのに、多くの病院はまず予約でまたされてチャンスを逃しがち。受診のコツがありますか?

A 大学病院は確かに待ちます。依存症に場合メールで受け付けするので他の外来よりは少し早い。相談した記録を残すことは大事です。

 

Q2 息子が2年前北里に任意で入院して、先生に認知行動療法を希望したのにやってもらえなかった。

A ちょうど2年前やっていなかった。今はやっています。大学病院は診療の質が高いというわけでもない。反面重症で他でうまくいかなかった人をなんとかする努力はする。医者を作る場所でもあり若い医師が多い。移動も多い。認知行動療法は採算面でやりにくいので専門にやるカウンセリングルームでなら確実にやれる。自費ですが。依存症に限っていえば集団認知行動療法をテキスト使用で医師がいなくてもできるようにした。大学病院は短期集中的な所がある。ここだけで支えるのは無理。入口として利用してほしい。依存症の治療は長期ですから。

 

病院の探し方。ネットでわかりやすいのは、「久里浜医療センター」のホームページの下の方に、依存症専門医療機関のリスト、回復施設のリストがあります。ある程度実績のある所はカバーしています。これは厚生労働省の事業として作っているサイトで非常によいです。

文責:伊藤