<8月家族会報告>
30年8月18日(土)午後1時半~5時 17名参加(15家族)初参加3名(2家族)
講師:栃原晋太郎氏 (栃木ダルクアウトリーチ部部長)
田中代表:猛暑の中ですが相模原ダルクは無事で35,6人で推移しています。7月は名古屋NAコンベンション、8月は山中湖キャンプに行きました。今日は道志川にバーベキューに行っています。健康的な物を食べて運動して、疲れたら薬なしで眠れるようになるよう、心掛けています。栃原さんは家族会に今日で2回目です。僕は8年前千葉ダルクから栃木へ研修に行った時は栃原さんの運転手していました。昨日栃原さんには社内研修として一日話してもらい、刑務所出所者への対応法について学びました。やっぱり一緒に住んでくれるスタッフにかかっていますね。言葉ではなく一緒に生活して回復を伝えることに尽きるかなと思いました。栃木ダルクは家族教室もしており、15年と長い歴史がありますので聞いていただければと思います。
栃原:私は栃木ダルクでアウトリーチ部というセクションをまかされていて、あとファーストステージセンターという初期施設の施設長を兼務しています。アウトリーチ部は入寮事業以外のものをいいます。学校講演とか、刑務所や保護観察所でスマーププログラムの提供とか。家族プログラムの提供もあります。
栃木県内には家族支援の社会資源がたくさんあります。ナラノンはもちろん。家族が主催する家族会が2つ。実際の運営は栃木ダルクですが県がお金を出してくれるようになったので、県主催の「栃木ダルク家族教室」というもの。あと実際に県が主催している家族会が3つ、4つ目ができようとしています。それぞれ開催曜日がずらしてありますので、ご家族のライフスタイルに合わせて参加できます。僕自身家族支援に関わるのが好きです。仲間の回復支援に関わるのも好きですね。一人一人は薬物を使い続けてどうにもならなくなってダルクに来た。自己肯定感もなくなり人を裏切り続けてきた。社会資源の最底辺たるダルクに辿り着いた人です。そんな人が共同生活を始めてから、自尊心を取り戻し、健康になって社会に戻っていく。ご家族も同じようですね。最初に来たときのご家族の顔というのは、「うちが世界で一番不幸だ」と思っている。「当事者活動なんかに自分の子供をまかせていいんだろうか」と不安で。「ホントのこと話していいのかな」と。それが継続していくうちに変わっていきます。表情が変わるだけでないです、僕とのコミュニケーションが変わります。
栃木ダルクが行う家族教室は40,50名です。ダルクの入寮者は60~65名。初期施設の責任者としてご家族にはぜったい来て下さいと言います。初期施設は断薬断酒だけ、素面が少し楽しくなるところまで。中期にはプログラムを深めていきますのでテキストも使い認知行動療法もします。後期には面接の練習やらボランティア活動やらミーティング会場を探すやら。そして就労に入る直前に家族との関係構築を入れています。家族がいる場合は再構築をした方が絶対予後が良い。家族にも病気のことを理解してほしい。依存症を知ってほしいです。この10年位の間家族に言うことも変わってきています。最新のことを受けてほしい。家族会では入寮している人が65%くらいです。卒業した家族もいる。刑務所にいる場合も、家族と同居している場合もある。色々なタイプのご家族に会える。こうじゃないといけないよというのはない。本人の場合も同じだと思います。色々なご家族を見て、経験を聞いて、回復のイメージを作ってもらえばいいのです。栃木ですら10年前なら本人が帰ってきたら「とにかく突き放せ、家の中に入れるな」と。今はその3割くらいをエッセンスとして伝えていますが、前は突き放しの理由やメリットやデメリットを伝えていなかった。今は「本人が帰ってきたらご家族が一番してほしいことを伝えて下さい」と言ってます。でも本心でないとだめ。本人は人生かけて向かってくるわけで必死だから嘘も言います。その時「ダルクに帰れ」といっても本心で言ってなければ本人に届かない。帰したい人には「帰れ」と伝えるし「地域で生活してNAで回復する」のもありかもしれない。「信じることを言ってください」と。そういう僕の言葉を信じるためにも一杯僕と話しましょうと。
あと家族会で気を付けているのは、栃木ダルクで何やっているかを伝えます。昨年からプログラムの様子を録画して動画で流したりしています。去年はファーストステージで一人一人にインタビューして、それを録画して家族教室でずっと見せました。「どんなこと感じている?」とか「何が変わった?」面白いですね。家族に対してのメッセージの他に本人にとってもいいですね。家族がダルクでの回復プログラムを信じられるようになるには、ダルク側も努力しなきゃいけないかなと思っています。
家族会に来るご家族の関心は、やっぱり本人にあります。僕は本人のためでもいいと思います。僕自身が回復し始めた最初の理由は家族のためでした。べつに自分の人生やり直すためではなかった。自分の人生なんかに対して価値を認めていなかった。クリーンが続いているうちに、新しい生き方していうちに、変わらなきゃいけないと後から思えるようになるものであって。今は「家族のため」という理由をくれたことに感謝です。家族と一緒に回復を、僕自身が楽しむってのがいいです。僕29才でつながってクリーンが14年超です。施設長を始めた最初はとても力いれてたけど、あまりよくならなかったです。ダルクを卒業した後戻ってくる人が多かった。それならダルクを出てからまた関わりたいなと思ってくれる存在になりたいなと思うようになりました。そうすると頑張りすぎてはダメで、笑っているほうがいい。それで年を重ねるほど穏やかになってきました。
ご家族のかかわり方で覚醒剤使うようになったりしないですよ。ご家族が薬を使わせたわけじゃないですからね。覚醒剤を使う人との関係を本人が選んだから使ったんでしょ。家族が生き方を変えるのがいいのは、家族が悪かったからではなく、変わった方が本人もご家族も幸せになりそうだから、ではないかな。理想の家族として歩む必要はないですよ、しらふでいてくれればいいじゃないですか、少しでも今より楽ならばいい。今後関わらないことにする家族再構築もありですよ。ダルクを卒業してきた本人と会うなら、どういう準備をしたらいいのか。中退してきた本人と会うなら、どのように迎えるか、それを考えるのが家族会。
栃木ダルクの家族教室の特徴は、一部はプログラムで家族向けスマープのテキストが1時間半ほど。その後個別面談。面談している人以外の人たちはフェローシップしています。家族同士が情報共有をすごくしてくれています。うちはこうしていたといった事。僕自身がダルクで感じた「驚きと安心と受け止めてもらえた感」がある。講師が話すだけでは一方通行だけど、家族同士が話すことの方が通じ合えます。面白いのは家族会の中では他のダルクを転々としてきた、家族歴20年なんて人がいます。「突き放しこそ全てだ、再構築などいらな」と主張します。僕の感覚とは違うけど、ご家族がやってみてそうだと思ったり、違うと思ったりする。本人の回復と一緒です。僕らは場所を提供します。本人が聞きたくなければお説教しても仕方ないし。
本人と家族を一緒に見られるのは特権ですね。本人がちょっと正直になると「実は寂しかった、実は止めたいのに止められなかった」と話し始めると、お母さんが家族会の中で変わってくるんです。嘘言って強がっているだけの人の家族は、やはり鎧をかぶってますね。どうしたいかわからない。鎧を脱がない人はだいたい話を大きくするのがふつう。自分のことを大事にする価値がわからない。周りの人を大事にすることができない。その瞬間は頑張るけど、続けることの意義がわかってない。薬が止まる事はダルクでは当たり前。大問題から始めようと言います。目に見える大きいところから。生き方変わるぞと、うちの仲間は教えることができるから。そうなると他人なんかほっておいて変わっていきます。薬物使う生き方が普通になっちゃっているから、使わない生き方で、人と関わる生き方にかわるのは時間がかかります。栃木ダルクでは僕は代表の次に長いです。だから最初は関係が堅苦しくなりがち。でもご家族との関係が変わる時がありまして、それは本人が変わってくるサインかなと思っています。
栃木県でやっている家族支援の話を詳しくしましょうか。宇都宮の場合、10時から午前中は講師を呼んで。午後は家族のわかちあい。栃木県がやってる家族会「ガイドポスト」は精神保健福祉センターでやっていて。県北と県南の家族会は隔月。それらの多くに講師として僕らが参加しています、一番小さいのが6,7人。中心は近くにお住まいの家族の方。お菓子食べてお茶飲んでいい居場所です。「ガイドポスト」は県の主催で初犯執行猶予者の家族向けです。平日夜とか土曜日とかでスマープやるからおいでと。ダルクのスタッフと関わっているとわかれば有利に運ぶ可能性があるからみなさんよく来ます。そこで回復する人もいます。薬物使ったから必ずダルクというわけではないです。
僕は刑務所教育をずっとやってきて、ダルクを使わなくていいかと思ってます。喜連川はR-1指定(薬物犯)の人は全員グループワーク入るのです。10回クールの。「せっかく素面だし、やめ続けてもいいじゃない」と言います。そうすると本人たち、初めて止めるもありかなと思う。刑務所こそいろんな人がいます。使い続けない人もいれば、何十年も薬使ってきた人もいるので。でも薬やめ続けて幸せになっている人と出会ったことがないんです。だからこそ「一人でいきがる必要はない、一緒に止めて行けるよ」と話すと、少し顔色変わります。出所しても薬仲間しかいない人もいる。「喜連川社会復帰促進センター」に10年通ってますが喜連川からダルクに入った人は二人しかいない。というのは正直に「仮釈放プログラムよりうちのプログラムのほうが長い」と言うから、2年半から3年かかるよといいます。すると来ない。(笑)それでも自分の回復を深めるために徹底的に正直であることを大事にしています。栃木ダルクで刑務所経験者が50%かな。でも初犯刑務所から来る人はほぼいません。府中、横浜、新潟、群馬前橋とかの人が多い。保護観察所経由で入所する人が多くて。
今国が再犯防止に力いれています。「再犯防止推進モデル事業」を始めました。満期出所者向けに、本人が望めば刑務所に迎えにいくし、住まいを提供するし生活保護にかけ、就労にむけての同行面接もする。これを県が無料提供しますがコーディネーターは栃木ダルクです。こういうのが全国に広がっていきます。県が提供するスマープ参加と夜の自助グループや尿検査もセットです。そうするとダルクのありかた難しいですね。新しい制度が始まりました。ただ栃木ダルクに行けば何があり、どのような社会復帰があるのか説明できる必要がある。ダルクはいま過渡期だと思います、後10年かすると4分の1くらいのダルクは消えると思います。
僕は最初回復支援が好きだと言いました。薬使いながら多くの人を傷つけてきて、今も埋め合わせできてない人がいっぱいいます。幼馴染や友達や仕事仲間、全て切りました。栃木ダルク出て社会復帰した後も連絡とっていません。埋め合わせしてないけど、12ステップでいう『埋め合わせは本人にするよりも、代わりに別の人に埋め合わせしろ』ですね。ホントの意味で人に必要とされる人間になりたいと思います。ダルクに入るまではダルクに入るのが目標。ダルクに入ったら卒業するのは目標。だけど人生はもっともっと長くて、ハッピーなことばかりあるわけはない。でもそこそこ自分の生き方が気に入ればいい。施設長やりだして11年たつけど、やり続けたからこそ見えることもできる事もあります。与えられすぎるほど与えられてきたと思います。僕のスーパーバイザーはみんな言います、50%でいいんだよと。僕50%生き方わからなかったです。120%がふつうだったから。でも精神科医にいわせると50%が良いそうです。僕の周りで素面になって施設長になった人で、脳梗塞になる人、頑張りすぎて鬱になる人がいる。だからダルク職員になる事が目標ではないです。僕自身が健康でそこそこ幸せで、ということを大事にしています。
質疑応答
Q R-1とは
A 薬物事犯者です。必ず覚醒剤離脱プログラムを受けることになっています。全国統一プログラムになってから質がおちています。少なくともこれはやっていますといえる材料になるのですが。スマープも15回の物を10回に凝縮しました。一時間半のものを一時間に凝縮しました。読んでるだけ、講義しているだけもあります。グループワークになってないものもあります。申し入れしているのでこれから変わっていくと思います。喜連川の再犯率17%というのはいい数字ですね。グループワークを価値あるものにしていけば、刑務所は止める大チャンスになります。
文責:伊藤