<4月家族会の報告>
参加者は12家族13名、初参加は2家族2名。
セミナー講師は、精神保健福祉士のSさんでした。
世話人より、家族会お花見の報告と家族会会計報告がありました。
相模原ダルク代表 田中秀泰さん
相模原市は依存症に対する理解が有ります。3年半前、相模原ダルクがスタートした時から、私を市役所に呼んでいただいています。アルコール、薬物依存症の相模原市のプログラムが有ります。そこに私が講師として幾つかのプログラムに出ています。今日も相模原市のプログラムに出て来ます。無料ですので、お近くの方は参加してみて下さい。
今、利用者は34名です。5名が入院中です。
相模原ダルクでは、ようやく、3年半越しに2名が卒業します。3年半掛けて、しっかりとプログラムを学び終えて卒業します。今、中に居る方も卒業を目指しています。卒業する時も、卒業証書を渡したりするセレモニーを考えています。また、卒業しても相模原ダルクに通所が出来て、仲間と関われるようなOB会を作って行きたいと考えています。
今日のセミナー講師のSさんは7年前に沖縄に居た時に一緒に活動していました。女性の相談も、最近はかなり多くなりました。お母さんが多いので、同性の方の話しはすんなり心に入っていくと思います。女性の目から見たプログラムとか、ダルクに繋がる前や回復初期の状況とか、女性の立場で話しをしていただけます。
精神保健福祉士 Sさん
今日のセミナーのテーマ
■依存症が作る硬直化した家族関係 ■病気からの回復 ■家族の回復のトレーニング
(・CRAFTを使ってコミュニケーションの改善 ・思考の歪みを修正しよう)
今回の報告では、■家族の回復のトレーニング を、詳しくお伝えします。
コミュニケーションの改善。イネーブリングを止める。本人に治療を勧める。ここに辿り着く為に出来ること。まず、コミュニケーションの改善が一番やり易い、取り組み易い。それは、関係改善に繋がる方法になります。今日は、「コミュニケーションの改善」を中心にやっていきます。
どうやって行ったら良いのか? 適切なコミュニケーションスキルの獲得です。提案や気持ちが、本人に届き易くなります。上手に治療に繋げることが出来るように持っていくコミュニケーション。再発防止に役立つ関わりが出来るようになります。これが出来たら、何と素晴らしい! となる感じですが、直ぐには出来ません。何度も何度も練習して、失敗して、そこから学んで身に付けて行く形になります。
「相手に自分の気持ちが届き易くなる為には、どう言ったら良いの?」
「治療に繋げる為とは、どんなコミュニケーションなの?」
<効果的なコミュニケーションスキルガイド>
以下の8つを中心にしてコミュニケーションをとる練習をしていくと、本人を治療に繋げるところに結びつくようなコミュニケーションが出来ます。
1.「私」を主語にして話す
病気に巻き込まれている家族は、どうしても、「あなたは、何で出来ないの!」「アンタは、何で止めないの!」という、相手を主語にした言い方になってしまいます。「私が…」「私は…」という話し方というのが、知らない内に無くなってしまい、常に相手に対して怒鳴ったり、脅したり、責めたりする会話になっていきます。そういう会話では、どうしても相手が反論し、反発してきてしまいます。そうすると、言い合い、やり合いになって、こっちが負けるパターンになってしまいます。それでは何も良いことは有りません。まず、「私」を主語にして話しましょう。
2.簡潔に話す
普段、我慢している分、思うことは沢山溜まっています。本人も、こちらが話そうとすると逃げてしまいます。そうすると、また溜まってしまう。「よし! 言えるぞ!」と思った時は、溜まっていたものを一遍に言おうとするので、すごく長くなります。あれも有って、こんなことも有って、「そう言えば去年はね…」「そう言えば先週もこんなことがあったでしょ!」と、どんどん長くなります。本人は半分も聞いていないので、全然効果が無くなってしまいます。言いたいことを、ポン! と話して伝えましょう。
3.肯定的に話す
いつも相手の行動に振り回されていると、どうしても否定的になってしまいます。「そんなことをしているから!」という感じになってしまいます。「病院に行かないからまた飲んだのよ! またスリップしたのよ!」という形の、否定的な話し方になります。それは、相手を責めたりする形に繋がってしまうので、相手は聞く耳を持たなくなってしまいます。これを、逆の、肯定的に話す、ポジティブな方向で話すという形に変えて行きましょう。
4.具体的に話す
「ちゃんとしてよ!」とか、「もっと、父親らしいことをしたらどうなの!」という言い方をされても、相手は、「ちゃんと!って、どういうことをしたら良いのさ」という形になります。そこのところを、「日曜日に、子供と公園に遊びに行ってくれたら嬉しいな」と、具体的に話しましょう。
5.自分の感情に名前をつける
日本人は、感情を言葉に表す習慣が無いので、最初は恥ずかしかったりします。「帰りが遅いので心配なのよ」「そんなにお酒を飲んでいると、身体を壊すんじゃないかって心配なの」「夜、一人で帰りを待っているのは寂しいわ」と、感情を伝えることです。心配なのか、嬉しいのか、悲しいのか。家族だから解るでしょう、というところが間違いで、家族だからこそ解らないと思ってもらった方が良いのです。特に、この病気に巻き込まれている家族は、本人もですが、自分の頭の中が色々なことで一杯になって、お互いに相手の気持ちを解ってあげる余裕が無くなっています。相手はこちらの気持ちが解っていないと思って言葉を掛けて下さい。相手に解ってもらう為に「私は今、悲しいのよ」「私はすごく心配なの」「こうしてくれると嬉しい」と、言葉で伝えましょう。
6.思いやりのある言い方
家族として本人と関わっていく中での、一番の願いは何でしょうか?もう一度、思い出して欲しい。本人が、クスリやお酒を止めて、健康になって、また社会に戻って、幸せにこれからの人生を送ってもらいたい。それが、家族の願いだと思います。その思いの中で、ドンドン依存症に巻き込まれて行って、家庭の中が喧嘩だったり、暴力だったりとなってしまった。しかし、本人の求めているものも、家族の愛情や、家族の理解なのです。口では暴言を吐いたりするけれども、本人自身は孤独の中で、苦しみの中で、家族の愛情や理解を求めています。そういうところで、常に責められたり、脅されたりすることに、本人も反発してしまいます。家族は、本人のことを理解したい思いや、良くなって欲しい思いで、思いやりのある言い方をしましょう。そうすることで、本人も「エッ! 今日のお母さんは何かおかしい」と感じます。その「エッ!」という、本人の心の変化を引き出す、それが目的です。
7.部分的に責任を受け入れる
例えば、本人の失敗に対して、「今日、何で病院に行かなかったの!」と、相手を責めるだけではなく、「私も、病院のスケジュールをカレンダーに書いておいてあげれば良かったわね」「そうすれば、忘れないで済んだのにね」と、協力する態度を伝える言葉掛けをしましょう。
8.支援を申し出る
関わりの中で、本人が困っていることが有れば、タイミングを見て、「相談に乗るから」とか、「何時でも協力するからね」と相手に伝えることも大事です。
この後、練習問題のテキストを使い、参加者は二人一組になって、交互に「効果の無い言い方」と「効果の有る言い方」を相手から話し掛けてもらいました。その二つの言い方を聞いた本人の立場になって、自分はそれぞれどのような受け止め方をしたのか、どのように感じたのか、言い返すとしたら何と言い返すか、などを、お互いに分かち合いました。
(練習問題のテキストより)
A「効果の無い言い方」=依存症に巻き込まれた家族の言い方
B「効果の有る言い方」=コミュニケーションスキルを使った言い方
練習① 「私」を主語にして話す
A「あんた、また嘘ついているでしょ!」
B「私には、その話しが嘘に聞えてしまうのよね~。」
練習② 簡潔に話す
A「たけし君にギターを返しに行くって、どこのたけし君よ? 今、何時だと思っているの。どうしてこんなに時間がかかるの? またパチンコ行ったんじゃないの? そうやって、コソコソしたことするから、信用も無くすのよ。こんな時間になるなら電話位してくれたらいいのに。ご飯も冷めちゃったじゃないの!」
B「帰りが遅いから心配していたのよ。今度から、遅くなる時は電話をしてくれると嬉しいんだけど。」
練習③ 肯定的な言い方
A「昨日のこと覚えてないの! そうやって飲んでいたら、そのうち認知症みたいに何にも判らないようになって死んでいくのよ!」
B「お酒のせいで記憶が無くなっているのよ。飲まなければちゃんと憶えているわよ。」
練習④ 具体的に話す
A「ちゃんとしてよ!」
B「朝ごはんまでに起きて、一緒に食べてくれると、お母さん、嬉しんだけどな。」
練習⑤ 自分の感情に名前を付ける
A「煙草を買いに行くって、どこまで買いに行っていたのよ! 煙草なら、そこの自販機で売っているじゃない!」
B「直ぐそこの自販機かなと思っていたから。なかなか帰って来ないので、心配してしまったわ。」
練習⑥ 支援を申し出る
A「通院し始めたと思ったら、また飲んで。 今までの努力が台無しじゃない!」
B「通院し始めたところで飲んでしまって、ショックでしょうね。今までの苦労を台無しにしない為にも、主治医の先生に相談しましょうよ。」
同じシチュエーション(場面、状況)で、言い方を変えるだけで、皆さん、感じ方とか変わりましたか? 言い返す言葉も変わり、トーン(声の調子)も変わります。カーッとなって言っちゃうと、相手も、カーッとなって言い返してきます。本人を目の前にすると難しいのですが、ぐっと抑えて言いましょう。本人に対して言う前に、家族と練習してみましょう。また、友人との関係の中で使える場面も有ると思います。やり易いところから入ってもらって、言葉掛けであるとか、「私は」を主語にするだけでも良いと思います。まず、出来るところからやってみましょう。全部やろうとしたら、きっと潰れてしまいます。こんなに沢山有るものを、毎回毎回しゃべる時に頭の中に思い浮かべて、「こう言わなきゃ」みたいに思ったら、とても言えません。これは出来そうかな、というところから取り組んでもらえたら良いと思います。それだけでも、かなり効果が有ります。本人が「エッ! 何かおかしい」と反応を示したら、「よし!占めた!」と思って下さい。そこから始まります。
別に、練習用のプリントを用意しましたので、「こんな言い方(B)が出来るかな…」と、時間の有る時に練習してもらえたら、日常で使う時に役立つと思います。
(練習用のプリントより)…以下の「A」の言い方に対して、「B」の言い方を考える。
練習① 「私」を主語にして話す
「飲み過ぎじゃないの?!」
「最近、全然話しを聞いてくれないじゃない!」
「ホントに止める気あるの?」
「また借金作ってないでしょうね?」
「もっと早く帰って来られないの?」
→「 B 」
練習② 簡潔に話す
「最近、診察に来ていないって先生から聞いたぞ。行っているって嘘ついていたんだな。どうしてお前は嘘ばかりつくんだ。行っていないなら行っていないと、ひとこと言ったら良いだろう。ひょっとして、お前、隠れて飲んでいるんじゃないだろうな。」
→「 B 」
練習③ 肯定的な言い方
「一緒に出掛けると、いつも飲み過ぎて、恥ずかしいことを言ったりするのが嫌なのよ。」
→「 B 」
練習④ 具体的に話す/具体的な行動に言及する
「家の手伝いを少しもしてくれたことが無いじゃない。一度位、手伝ってよ!」
「たまには、父親らしいことをしたらどうなの!」
→「 B 」
練習⑤ 自分の感情に名前を付ける
「見ている方がストレスになるわ!」
「苦労ばっかり。こっちが病気になりそうよ!」
→「 B 」
練習⑥ 思いやりのある言い方をする
「暇な時に、他に何かすることが思いつかないの? 飲んでいるか、寝ているかだけじゃない。」
→「 B 」
練習⑦ 部分的に責任を受け入れる
「修理屋さんにどうして電話してくれなかったの? 昨日の晩、そうするって話したじゃない。」
「何で、診察に行かなかったのよ? しかも、キャンセルの電話もしないで…」
→「 B 」
練習⑧ 支援を申し出る
「最近、ストレスが強いのは分かったわ。だからって、馬鹿をしたり、クスリを使う為に、お父さんの腕時計やお母さんのアクセサリーを勝手に持ち出すってどういうこと。泥棒と同じよ!」
→「 B 」
<家族の回復>
こういった形のコミュニケーションを使ったり、イネーブリングを止めたり、色々なことをしながら家族の機能を回復して行きます。しかし、家族自身は、「病気は本人であり、私たちは被害者」という思いがすごく強いのです。「本人さえ回復してくれたら、この家族は普通に戻るのに…」と思ってしまう。しかし、実は、依存症の病気に巻き込まれて行った家族は、多くの影響を受けています。家族自身も、感情が爆発して、「我慢→ドカン」「我慢→ドカン」を繰り返しています。本人が「止めた」と言ったところで、家族にも本人にもピカピカの、もう大丈夫という心と身体が直ぐに戻って来るわけでは有りません。止めると、本人には、心身ともに苦しい離脱症状が出て来ます。家族も同じなのです。最初は、ポンコツな本人と、ポンコツな家族が残っているのです。嵐が去った後に、木が倒れ、家の屋根が飛び…というイメージを思い浮かべてくれれば解ると思います。家族も努力しないと、心や身体や考え方が回復しません。最初は、お互いに全部壊れています。受け入れるのはしんどいことかと思いますが、自分も被害を被って壊れている、という意識を持ってもらいたいと思います。後片付けと修繕が、どちらにも必要になってきます。本人も家族も、生き方や考え方を変えて行く努力が要ります。自動的には変わりません。依存症は「本人のクスリが無くなったら、お酒が無くなったら、自然に良くなるさ」という病気では有りません。病気によるダメージがかなり大きいので、回復の為の努力を、お互いがして行かないと、健康で機能がきちんと回る家庭、健康な本人や家族が戻って来ません。ただし、この回復の為の努力をすることによって、以前よりも、もっと良い関係、良い家族関係が新しく出来る可能性が含まれています。是非、家族の方も、こういった家族会に出るとか、自分の中の歪んでしまった部分を知っていくことをやっていって欲しいと思います。
<回復を邪魔する考え方の歪み>
依存症という病気からの回復には、依存症的な考え方を健康的な考え方に少しずつ修正して行く必要が有ります。これは、本人も、病気に巻き込まれて行った家族も同じです。どの人にも程度の差こそ有りますが、こういった歪みは有ります。ただ、それが極端かどうかです。依存症という病気の恐ろしいところは、この考え方の歪みをどんどん大きくしていってしまうところです。それも、徐々に歪んで行くので気が付かない。意識しないまま、その状態になっていくので、考え方の歪みを意識することが、回復の為に大事なポイントになります。
白黒思考
物事を白か黒かのどちらかで考えてしまいます。良いか悪いか、真ん中が無いのです。少しでもミスが有れば、完全な失敗と考えてしまいます。
過度の一般化
よく、子供が「お母さん、ポケモンのゲーム買ってよ。みんな持っているんだよ。クラスの子、みんな持っているんだから。僕だけ持ってないんだよ。」 お母さんが「みんなって誰?」と聞くと、隣の子だけだったりします。一人が持っているとみんな持っているようになる。そういうのを「過度の一般化」と言います。たった一つの良くない出来事が有ると、「世の中全てこれだ。いつも上手く行かない。」と考えてしまいます。
心のフィルター
常に、どんなことが有っても全部悪く捉えてしまう、そんなメガネを掛けているようなものです。良くないことしか見えないメガネを掛けている感じ。たった一つの良くないことに拘って、そればかりをくよくよと考え、現実を見る目が暗くなっていってしまいます。
マイナス思考
何故か、良い出来事を無視してしまうので、日々の生活が全てマイナスのものとなってしまいます。出来て当たり前で、後は減点して行く感じです。
結論の飛躍
根拠も無いのに悲観的な結論を出してしまいます。
- 心の読み過ぎ:ある人が自分に悪く反応したと早合点してしまいます。
- 先読み勘違い:事態は絶対に悪くなると決めつけてしまいます。
拡大解釈と過小評価
良いことに使えば良いのに、良くない方向に拡大解釈と過小評価を使ってしまいます。自分の失敗を過大に考えてしまいます。「もう駄目だ。もう私なんか主婦失格だ。もう私の人生お終いだ。」 良いことが有っても、「出来て当たり前。こういって当たり前。」と、すごく小さく捉えてしまいます。
感情的な決め付け
自分の憂鬱な気分は現実を反映していると考えてしまいます。自分の感じたこと=現実と考えてしまいます。
べき思考
「こうすべき、これが正しいのだ。こうで在らねばならぬ。」何かやろうとする時に、「…すべき」「…すべきではない」と考えてしまいます。そうしないと罰を受けるかのように感じ、罪の意識を持ち易くなります。他人にこれを向けると、怒りや葛藤を感じてしまいます。
レッテル貼り
極端な形の「一般化のし過ぎ」。ミスをした時に、「どうしてミスをしたのか?」を考える代わりに「どうせ自分は人間失格だ」などと自分にレッテルを貼ってしまいます。他人が自分に不快なことをした時には、「あの、ろくでなし!」などと相手にもレッテルを貼ってしまいます。そのレッテルは感情的で極端なものです。
個人化
何か良くないことが起きた時に、自分の責任ではないのに、自分の所為(せい)だと考えてしまいます。「私が悪いのね」「そうよ、それで良いわ」
思考の歪みは、個人差が有ると思います。一般的に、依存症に巻き込まれた家族の思考は、こういうものが強くなっています。自分は、この中でどういう特徴を強く持っているのか、というのを気付くことが大事なのです。
この歪みが、どう影響するのか? この歪みを持っていると、この歪みを通して感情や行動が左右されてしまいます。
<思考の歪みのフィルターを通った、出来事と受け止め方の例>
「出来事」は、良いことも悪いことも、事実は変わりません。これを、どう受け止めるのか。ここが、次の感情に結びついて、行動に結びつきます。
「出来事」例1
夫「今夜は肉が食べたいな」 私「あっ! 焼き過ぎた!」 夫「何だよ! この肉は焼き過ぎじゃないか!」
「受け止め方」
・考え方
「完全に主婦失格だ」(白黒思考)
→肉が焦げた位で主婦失格にはなりません。
「きちんと出来た試しが無い」(過度の一般化)
→本当ですかね? 上手く出来ることも有りますよね。たまたま今日は出来なかった。
「こんな自分が嫌だ」(拡大解釈)
→「自分」が嫌なんじゃない。肉が上手く焼けなかったことが嫌なんです。
「毎日一生懸命やっているのに、あんな酷い言い方なんて」
・感情
憂鬱、怒り(自分、相手)
→自分には、「こんなことも出来ない私はもう嫌!」
相手には、「この位でこんなに怒ること無いじゃない!」
罪悪感
→「上手く焼いてあげられなかった」
マイナスの感情しか出てこない。
・行動
冷たく無視する。
相手に反論する。
落ち込んで、肉も喉を通らない。
受け止め方一つでこういうことになっていく。
「出来事」例2
私「〇〇さんにメールしよう」 私「返事が来ない」
「受け止め方」
・考え方
「私のメールが気に障ったに違いない」(個人化)
「私のことを嫌っているんだ」(結論の飛躍)
事実は、メールの返事が来ないことだけ。
・感情
落胆、不安、悲しみ、孤独
・行動
メール内容が気になり、何も出来ない。
相手に話し掛けづらくなる。
<思考の歪みにどう対処したら良いのか?>
(出来事 → 私にはどうしようもない 受け止め方 → 私がコントロール出来ること)
「出来事」というのは、私にはどうしようも出来ません。変えられないことです。起こってしまったことは、良いことも悪いことも変えられません。変えられるのは、「私の受け止め方」です。ここを変えて行きます。思考の歪みは、自分で自分を縛って苦しめて行くだけです。これから脱け出す為には、自分の受け止め方の癖、「私は結構マイナス思考だわ」「私は直ぐ自分の所為に取ってしまうわ」という癖に気付くことです。気付いたら、今度は「また私、歪んだ思考になっているわ」というのが浮かびます。そうしたら、次は、健康的な考え方、バランスの取れた考え方だったら、どう考えるだろうか、どう捉えるだろうか、というのを、ひと呼吸置いて考えてみます。そうすると、「あれ? メールが返って来ないのは、別に、私が変な内容で送ったから相手を傷付けて相手が怒っているわけじゃないのかも知れない。もしかしたら、直ぐに返せない事情が有るのかな? もうちょっと、待ってみようかな。」 そういう形で、歪んだ考えとバランスの取れた健康的な考えを、自分の頭の中で思い浮かべます。その練習です。何度も何度も練習です。今日、こういうのが有るのかと勉強したからと言って、直ぐに自動的に健康的な考えに変われるようには出来ていません。コミュニケーションと同じで、練習です。もうちょっと楽な考え方って、どんなのが有るかな?」「これ、白黒思考だな」「これって、どんな考え方かな?」というのを考えます。時間を掛けてやっていく内に、自然に、思考のパターンが変わってきます。やっていくと、バランスの取れた考え方で捉える方が、心地良くなって来るのです。そうなると、自分が、相手の言葉や行動で、心がグサッとなった時でも、アレッと思って考え方を変えると、「あっ、そうか。これで良いんだな。」というのが、段々楽に出来るようになってきます。苦しいことは、人間誰でも嫌です。楽な方が、心地良く過ごせる方が良いので、そういう経験を重ねることで、心地良い自分の受け止め方が身に付いてくると、そんなに苦労無く、割と出来るようになります。受け止め方の練習を、是非やっていって下さい。
<まとめ>
適切な対応法を学び、実践していく。
相手に対しても、自分に対しても、効果の無いことは止め、自分が心地良く生きられるような方法を実践して行きます。大事な考え方は、まず、「相手は変わらない」ということ。力ずくで変えようとしても、変わりません。しかし、働き掛けることは出来ます。こちらの働き掛けの方法を変えることで、相手が「エッ!」となります。そこから相手も変わって行きます。相手を変えるというよりも、自分自身が変わることで相手が変わって行きます。人は正しいことを言われたからといって、行動を簡単に修正しません。これは、皆さんが身を持って解っていることだと思います。いくら正しいことを言われたからといって、「解ってんだよ! でも、出来ないんだよ!」というのが、本人の言い分になってきます。自分も相手も、本当に望んでいることは何なのか? ここを忘れないで欲しいのです。「自分に出来ることを、探してやってみる。」 小さなことからで良いのです。大きなことを沢山、なんて考えずに、今、出来る目の前の小さなことからやっていって下さい。そこから、ドンドン拡がります。出来ないことより、出来ることに目を向けましょう。依存症の本人との関わりの中では、失敗することが多かったと思います。「せっかくやっても、全然効果が無かった。」しかし、「やってみた」という、そこを評価して下さい。出来ないことよりも、出来たこと、やってみたこと、チャレンジ出来た自分を評価して下さい。目的を実現する為に、考え方と方法の練習が必要です。コミュニケーションも考え方も練習が必要です。練習して行くと、出来ることが増えて行きます。上手くいかなかったら、次にどうすれば上手くいくか、それだけを考えます。上手く行かなかったことを、ウジウジ悩んでも、悩んだところで、何も変わりません。上手くいかなかったら、「じゃあ、次、どうしようかな」と、一歩前に向かって出て下さい。どんなに小さくても良いので、成功体験を増やしていって、自信を付けて下さい。一人で行き詰ってしまったら、相談することです。これは、すごく大事なことです。一人で抱えるのが、一番良く有りません。どんな小さなことでも、家族会、施設のスタッフ、カウンセラ―、専門家の方、信頼できるお友達でも良いので、とにかく相談して下さい。出来れば、行き詰る前に相談して下さい。それを、是非、取り組んで下さい。
家族の生活の質を改善する
この病気は、家族が元気じゃないと駄目なのです。家族が自分自身のことを正当に評価する。家族はどうしても、「自分の所為で…」という感じで、責任を全部担ってしまうところが有ります。全部担わないで下さい。相手の責任は、相手の責任です。自分のことだけ責任を取る。過去の努力への正当な評価をしましょう。「今までうまく行かなかった」それは、全部失敗じゃないのです。やってきたことを、評価して下さい。やろうとして出来たことへの評価。結果的に上手くいかなかったとしても、やろうとしただけでも、評価に値するのです。その、チャレンジというのが大事なのです。本人が苦しんでいるのに、病院に入院しているのに、施設に入って我慢しているのに、家族だけ旅行に行くなんて、と思う方は多いですが、そんなことは有りません。家族は家族で楽になって良いのです。楽しんで良いのです。そこは、分けて考えて下さい。家族が元気じゃないと、良い手も浮かびません。家族も疲れてしまうと、思考の歪みのようにマイナスの考え方しか出て来ません。身体が元気であってこその、心の元気なので、是非、元気を取り戻すよう、努力をして下さい。共倒れが最悪なのです。家族も本人も潰れてしまったら、最悪の結末です。家族は元気になり易いので、本人がどうしようもなくても、まず、家族が力を付けて下さい。そこから本人も変わります。
家族の回復の過程
混乱→家庭の外に助けを求める(最も勇気が要る)→病気についての正しい知識を持つ→家族も否認を解く→仲間を作り孤独感を無くす→適切な対応を身に付ける→本人への干渉を止める/自分自身に注目し自分自身の問題に取り組む→現実を見る勇気が持てる/新しい希望が生まれる→身体的・精神的な変化が現れる→新しい生き方への道が開ける/経済的安定へ一歩踏み出す→回復
焦らずに、その時期その時期のことに取り組む。
本人が治療に繋がったからと安心して、病院や施設にお任せではいけません。病気に巻き込まれていた家族も、依存症の二次被害で、考え方や生き方が病んでしまっています。依存症者に振り回され、疲れた心と身体を癒しながら、家族は本人とは別に家族のプログラムに取り組まなければなりません。家族が、それを怠ると、飲酒、ギャンブル、薬物を止めた本人を、家族がスリップに繋げてしまう恐れがあるのです。
(家族会世話人 広瀬)