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<8月家族会報告> 30年9月22日(土)午後1時半~5時 13名参加(11家族) 初参加2名(2家族) 講師:成瀬メンタルクリニック 院長 佐藤拓先生 田中代表:猛暑の中相模原ダルクは問題なく過ごすことができました。現 […]

9月家族会

<8月家族会報告>

30年9月22日(土)午後1時半~5時 13名参加(11家族) 初参加2名(2家族)

講師:成瀬メンタルクリニック 院長 佐藤拓先生

田中代表:猛暑の中相模原ダルクは問題なく過ごすことができました。現在利用者34名です。仕事に通いだした人もいます。来月4名の卒業式をしようと思っています。今日の佐藤先生は依存症全般をみていただいていますが、とくにギャンブルに関しては日本で第一人者です。町田市のクリニックにおられまして4年位のお付き合いになります。先生はカウンセリングをよくして下さり、診療に時間をとって下さる、ありがたい存在です。生きづらさ、トラウマと言った点は依存症の根っこにあり、どんな依存症にも共通しますが、そこに焦点を当てて下さいます。

佐藤拓先生:成瀬メンタルクリニックの佐藤です。もともと北里大学の精神科医です。もともと依存症に詳しかったわけではなく厚生労働省の仕事で依存症に関わることになりました。当事者会のGA、ギャマノンとか自助グループの人々とのおつきあいがあって、医療の側からどう援助したらいいか考えて来たものです。援助者として大切なことは、「エンパワメント」ですね。その人の力、今は損なわれているけれど本来ある力をどう引き出すか。またご本人のエパワメントと家族のエンパワメントはどうあるべきか、それを考えるのが援助者の仕事だと考えてやっています。

ギャンブル依存症について、国内の重要な関連資源にはどんなものがあるでしょうか。自助グループとしてはギャンブラーズ・アノニマス(GA)やギャマノン。いわゆるリハビリ施設。行政の相談窓口。病院やクリニック。相談室やカウンセリングルーム(ここではグループへの参加が難しい方や著名人で名前を出しにくい方には向くようです)。借金の問題もあるので、司法書士とか弁護士、多重債務支援団体、そして刑務所もこれに入ります。

本人への支援。まず考え方をシフトしてもらうことが必要だと思います。来られる方々はなんらかの形で失敗をした気持ち、反省と後悔を持っていらっしゃる。「我慢する」といいます。3ケ月はガマンできるかもしれない。でも半年は、1年は?それは無理だと気づきます。そもそもギャンブル依存がどうして起こるかというと、「対人関係の圧力を感じやすい人がバランスを崩して依存におちいる」わけです。ストレス発散の手段として行われる。むしろ我慢と逆の方がいいのではないか。「対人関係の圧力から解放されるような、自分への継続的なストレスマネジメントを行う」という我慢しないプランを提案してみます。

そもそもストレスとは何か。医学的にはストレス刺激とストレス反応に分かれます。生物には体の内部環境を一定に保とうとする仕組みがありますが、それを乱そうとするものをストレス刺激といいます。刺激に対して体の内部から起こる反応をストレス反応といいます。自分へのストレス刺激に私たちは無頓着ではありませんか?ストレスであること自体を意識することがマレなのです。意識してないストレス刺激に対する対処法が、ギャンブルやお酒であることが多いです。「なんでギャンブルにはまるのかわからない」という人が多い。何がストレスになっているのかわからなければ「二度としない」と誓っても意味がないですね。仮にストレス刺激に無頓着であるならば、対応策は二つ。何にストレスを感じるのか明確にする。二つ目は対処法の選択肢を増やす。そういうことを一緒に考えていくことで、回復の糸口が見えてきます。

精神科臨床の一般にいえることですが、先に体の問題がないか、心理社会的理由がないか、見つけて軽減することも大事です。体の不調がコントロール不能の原因になっていることがあります。心理社会的問題とは、職場、家族、金銭等の問題で不安でたまらないことがあります。それらの対処をしつつ、精神的支援として、心理検査をします。その人が何にストレス感じているかを明らかにする。得意なこと苦手なことを把握する。それから相談室なり自助グループなりへ結び付けていきます。

体の問題で見逃されやすいのは、パニック障害と低血圧の鑑別です。逆流性胃炎、睡眠時無呼吸症候群、鉄欠乏、その他の栄養不足などです。心理問題で大きいのはやはり金銭トラブルの問題。金銭の不安が解除されないと診療どころでないことがあります。幸いうちの近隣には理解ある司法書士の先生が多いので、専門家として「金銭問題は大丈夫です」と言ってもらうことが安心につながります。

「借金の返済は細く長くがいい」と言います。ギャンブルの方には借金が残っているというのは抑止力になります。返済しきるとさっぱりしてギャンブルしたくなる。かといって月々の返済が大きすぎると負担感が大きくてまたギャンブルをしたくなる。また家族間の貸し借りはしない方がいい。親から借りた金は何とでもなる。借金の問題はしかるべき場所でしかるべき相手に謝罪するほうが良い。家族は金の専門家ではないし、家族の方にはコントロール欲求がでてきて、それが嗜癖の刺激になる。貸すよりは上げたほうがよっぽどましといいます。債務問題、この日本で借金で命とられることは絶対にない。これが知っておくべき一番大切なことです。

金銭対応の難しいところは、本人の様子をみていかないとベストかどうかわからない点です。実は今の事が全く分からないという人もいます。わかるけど行動に繋がらない人もいます。そういうことのわかる債務問題の専門家がいると、すごくわかりやすい。医療機関だけで対応しようとするとうまくいかないです。実はお小遣いを週払いにするとか、金銭管理の日程管理、それだけで落ち着く人もいます。一方で管理されることがストレスで、中には犯罪行為に至る人もいます。

社会福祉サービスの利用もできます。就労支援、余暇支援、教育支援、精神障がい福祉サービスとか。重複する、うつ病、統合失調症、認知症、発達障害など、には福祉のサービスを併用すると効果的なことがあります。その方にとって何が支援になるか柔軟にやっていくべきだと思います。

うちのクリニックでのやり方ですが、ストレス原因の特定と、ストレス対応の選択肢を広げることから入ります。ギャンブルをやっている理由を聞くと、人によって違います。「お金が儲かること」本当はもうからないけど。「一時的に大きなお金が入ること」「負けず嫌い」「征服欲が満たされる」「光や音の刺激がいい」「人間関係に悩まされない」「気持ちがリフレッシュする」「論理的思考が満足される」「居場所」「イライラモヤモヤが消える」「スリル」。

ギャンブルやる理由は二つ以上であることがほとんどです。守銭奴がギャンブルしたら、おそらくギャンブルはやめます。金を稼ぐに特化してギャンブルする人は、パチプロとかは医療機関には来ない。「お金を欲しいくせに負けず嫌い」。どっちかにしてほしいですよ。映画館に行ってお金取り戻そうとする人はいない。少なくとも取り戻しに行こうと考えなければ、損はしないのですが。「目的が複数あるから止められないんじゃない?」とご本人に問いかけてみます。「やめたいといいながら続けてきたのは、ギャンブルで助けられてきたからじゃないの?」ならば我慢ではいかに無謀かわかりますよね。「一緒に別の修正案をさがしましょう」と勧めます。話し合いで探る方法がいいです、上手くいかなかったとしても余り問題にならない。「どこに無理があったんですかね」と次の方法を考えることができる。共同作業でやっていくと本人を責めないですみます。

本人にかかるストレス刺激を明らかにするために、心理検査が有効です。ウェクスラー成人用知能検査(WIS-Ⅲ) を用います。これは知能指数を測るのですが、「言語理解、知覚統合、作業記憶、処理速度」の4面で数値が出てきます。誰でもばらつきがあるものですが、バラツキ程度がその人のストレス環境を示します。言語理解とは、日本語の力。知覚統合とは論理的思考力と空間認識力。作動記憶とは単純な記憶。処理速度は遅い人と早い人でかなり差があります。この検査によってその人の得意と苦手がわかります。その人のストレスもわかります。本人と家族と援助職がそれを把握してこの人のストレス対策を練ってあげる。この利点は、陰性感情(嫌悪感や敵対感情)が薄まること。これはすごく大きいです。

苦手な能力がある事の世界観を想像してほしいのです。言語能力が低い人は、おしゃべりしていても楽しくない。おしゃべりでストレス発散は難しい。何に困っているんですかと聞かれても答えられない。こういう方に対してはコミュニケーションの必要のない環境、また本人の言葉を代弁できる人を置く事で、楽になります。

知覚統合が低い人は、物事の優先順位をつけるのが難しい、問題解決能力が低い。物事を考えないわけではないが、その人自体のやり方で考えていて、それを否定されてきたことが多い。間違っているかもしれないけれどまずは聞く。そこで関係性が出来て、それから助言していくと、すっと入ることがあります。スーパーバイザーをいろんな場面で見つけるといい。

作業記憶が低い人は、日々刻々と仕事が変わる環境は辛いですね。どうしてもしなければならない場合は、メモ魔になり習慣的に見てやっていく。こういう人は診察しても積もっていかないのですよ。このくらいわかってるかなと思っても、まったく理解できてなかったりする。

処理速度が低い人は、せかされる環境にストレスを感じます。仕事を急がされたり、もたもたしているのと言われると、まったく機能しなくなる。「マイペースが大事」と言い聞かせます。

 

能力が高いのも問題になります。言語能力が高いと、つい言葉で人を攻撃したくなります。知覚統合の高い人は、論理的思考が好きだから正しさでネチネチ人をせめます。作動記憶が高いと様々なことが気になってしまい、切り捨てる能力に欠けます。気になることばかり増えて解決能力がおいつかないから、変なところで不安になります。処理能力が高い人は他の人のスピードにストレスを感じます。他の人に行動を抑制されることにストレスを感じるわけです。衝動性に結び付くらしく、短絡的な行動につながりやすい。こういうことを障がいととらえるより、周波数と考えてほしいのです。能力が低いことも高いことも含めてその方の性格です。その人にストレス少ない環境をどうやって作るかです。

イメージをつかむために、有名人を利用して図表にしてみました、言語能力の高い人を黒柳テツコ型、低い人を高倉ケン型とします。(寡黙な人が悪いかと言うと、そうでもないですよね)。知覚能力の高い人をホーキング型、低い人をコロンブス型。(論理的能力の高い人はコロンブスにならない。普通に生活して満足できる人は、アメリカ大陸を発見したりはしないですよ)。作動能力の高い人は将棋の棋士、低い人は消しゴム型。処理能力の高い人を織田信長、低い人をマイペース力のある人。(処理速度の高さは織田信長の桶狭間の闘いを思い出します。)能力の高さ低さではなく、それを活用する力が問題なのです。

ここから症例ケースです。

  • 買い物依存の女性。海外留学もある高学歴の女性です。言葉遣いがていねいなので方には知能も高いかと思うと、心理検査受けるとIQがかなり低いのです。ご本人にどう説明しようと悩んだ記憶があります。考えて「あなたの問題には犯人がなかった」とお伝えしました。両親はあなたに期待して様々教育を授けた。あなたは親の期待に応えようと頑張ったが無理してしまった。あなたは周囲に釣り合わせるために過剰な買い物をしてしまうのですね、と。それだけでほっとしたのがわかりました。
  • パチンコ依存の男性。パチンコ必勝法に入れあげて浪費してしまいます。言語理解が低いということは、一般常識に少し欠けるともいえます。論理的能力が高いのでパチンコ必勝法を周囲に対して主張するのに能力を使ってしまう。それで周囲が参ってしまう。
  • 仕事は問題なくこなせていて、ストレスがわからないという20代男性。パチンコ以外の事に楽しみを見いだせない。記憶力が低いのです。趣味を探す際にも新しいものを探せない。MTGが全くわからないが、仲間との関係性は大切だと言っている。ご家族にもフィードバックしてみました。
  • 繰り返す窃盗壁の女性。知能指数90と言う数値は微妙です。平均が100ですから、常に何か周囲から負担感が強い。同情してもらえない。70くらいですと、周囲が同情して援助してくれるものですが。そのくせ処理速度が高いという利点をどうするか考えていたところ、ある時仕事をしたいと、趣味もしたいと言い出したのです。それで恐る恐るやっていただいたら落ちついちゃいました。最初は対人トラブルがあったようですが。うまくいきました。
  • パチンコ問題を繰り返す50代男性。この方はGAに行ったら最初から居心地が良かったといいます。言語能力と論理的能力が高かったので、皆からベテランの印象をもたれて気分がよかったようです。一方再就職には腰が重かった。検査の結果をもとに「あなたが就職について何を不安に思っていたのかわかりました、新しい場所に行って新しいことを覚える事が不安だったのですね」と言いました。それで腑に落ちたようです。
  • ご家族にも検査を受けてもらったケースです。50代男性で醜形恐怖があります。この方はお姉さんが先に相談に来て、なぜこんな失敗を繰り返す弟をなぜ私が放っておけないのかと思っての相談です。後で弟さんが来て検査しましたら、姉弟でかなり高さが違う。「あなたの能力が高すぎて、繰り返してしまう弟さんががまんできないのですね」。過干渉になる事の弊害は理解して下さいました。その後本人は借金問題を司法書士の方と相談して取り組んでいきました。
  • 50代パチンコ依存の女性。旦那さんに対してイライラが止められないといいます。特に親族を持ちだして非難するのががまんできないと。旦那様も自分に問題があるのかもしれないと来られて、夫婦で検査を受けました。この夫婦を見て考えましたね。言語能力も作動能力も同じくらいなのですが、知覚統合がご本人は低く旦那さんが高い。二人でかなり違う。作動能力はその逆でかなりギャップがある。お互いに自分にないものに惹かれて夫婦になるものかと納得したものです。わかりあうということはなかなか難しい事だと思います。

ここから家族への支援。

色々なご家族のお話を聞いて気になることがありますが、ギャンブル問題を何とかして下さいというが、本当にそうなのかということです。私の苦しみをどれだけわかってくれるのですか、という方。ギャンブルをどうかして下さいというわりにはギャンブルそのものはあまり関係ないように感じられます。状態が深刻化したことの反映でしょうか、被害金額とはあまり関係なく夫婦ズタボロです。チキンレースの感じがする。どちらが辛いか競いあっている。私はもっとつらい、俺だって苦しい。こうなると客観的状況を冷静に受け止めることができない。大したことないスリップでも、人生終わったかのように感じてしまいます。

解決の最初はチキンレースをやめることです。自分にとって楽しいと思える時間を増やす事。そんなこと許せませんと言われます。本当にギリギリの方は追いつめられてしまっていて動かせない。ご本人の場合でもご家族の場合でもありますが、まずは同情して聞いてあげることからしか始まらない。そういうときに大切なのが家族会、自助グループですね。苦労させられている相手のために、なんで自分が行かなければならないのかと思われるでしょう。でも心にゆとりをもてるようになります。

「家族間葛藤は両価性の問題」といいます。嫌いになったけど好きなところもある。好きだから迷惑も一杯かけられた。まったく相手の事が嫌いなら切ればいい。しかし感謝していること、迷惑かけたこと、両方を引き出していくのです。外来における内観カウンセリングです。本人、家族、それぞれに思いを十分に出したら、段々糸口が開けてきます。また使える社会資源は何でも使って、ゆとりを見つけて行きます。

日ごろ大切に考えていることが三つあります。ギャンブル問題への対応を説明した時のご本人の対応。またご家族の対応とそれをどう評価するか。あとは関連機関と繋げることです。私の意見を押しつけることは全く必要ないです。大切なことはこちらの話を聞いたことによってその方の中で何か反応が変化がおきること。その方が考えたことを拾い上げることがエンパワメントにつながるのです。大切なのはやり方でもメソッドでもありません。何がその方の問題の原因なのか、何が変化に繋がるのかは、実はよくわからないです。こちらが思ったものは自信をもって提供しますが、最終的には本人がそれについて考えたことを尊重して、回復能力を引き出していきます。ご本人が考えた道を、失敗も含めて見守っていくことではないかと思います。

文責:伊藤


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