<2021年7月家族会報告>

7月17日(土)1時半~5時  20名参加(15家族)

講師:水澤都加佐先生(HRI ヒーリング&リカバリーインスティテュート 所長)

「依存症と共依存」印刷資料あり

 

今日は「依存症と共依存症」ということでお話させていただきます。依存症は皆さんご存じの病ですよね。依存症は紛れもなく病気です。健康保険も使えます。入院治療もできます。それは社会が病気だと認めているということですが、なかなかご本人もご家族も病気だとは認めにくい面があるようです。ダルクで扱っているのは、アルコール依存症と薬物依存症とギャンブル依存症ですね。アルコール依存症を最近はアルコール使用障害ともいいます。それから薬物は覚醒剤とか大麻とかですが、最近多いのは市販薬です。風邪薬、咳止め薬、鎮痛解熱剤に依存している人がものすごく多いです。特に20才未満の若い子たちですが、お酒は20才以上でないと買えませんが、市販薬は誰でもいくつでも買えますから。それを乱用して依存症になる人が多いです。とくにパブロンゴールドという風邪薬を「金パブ」と称して乱用する人が多いです。また処方薬で依存症になる人も多いです。ギャンブル依存症はギャンブル障害とも言います。依存症全般をダルクでは扱います。ここに勤務している職員の方は、専門家の方もいますが、回復した方が自ら治療者として働いている方がたくさんおられます。皆さまも何か分からない事、困ったことがあったら、スタッフに相談してください。私もほとんどの職員の方を存じ上げていますから。非常にいい治療施設です。

今日は親御さんの立場の方がおおいですね。周りもご本人も必ず言うことに「親の育て方に問題があったんじゃないか?」と。それは、ウソです。依存症の原因は三つです。医学的に認められた原因は三つ。まずアルコールであれ薬物であれギャンブルであれ、飲みすぎか使いすぎかやり過ぎです。どこかで止められたらよかったんですが。お酒を飲まない人はアルコール依存症になるはずがありません。パチンコ屋にしょっちゅう出入りする人は危ないですが、行ったこともない人がギャンブル依存症になることはありません。薬を乱用したことのない人も依存症にはなりません。二つ目は遺伝の要素があります。意外に思われるかもしれませんが。じゃあ子供が依存症ならうちの孫は必ず依存症になるのか、と思われるかもしれませんが、これも間違いです。遺伝があっても依存物質や依存行為をやらなければ依存症にはなりません。ですからうちの家系は依存症になりやすい家系だよと、早めに子供さんにお話しなさるのが大事です。両親とも依存症でない家に生まれたお子さんと、両親の一人が依存症である家に生まれたお子さんを比べると、4倍依存症になる可能性が高いと言われています。両親とも依存症である家に生まれたお子さんは、両親ともそうでない家のお子さんより8倍から9倍も依存症になる可能性が高いと言われています。だから家庭のなかに依存症者のいる家では、孫子の代まで依存症に気をつけようと言った方がいいです。

私の家も依存症の家系です。祖父が銀行で偉い人でした。ですが銀行のお金で穀物取引とか小豆相場とか、一種のギャンブルです、来年の収穫高を予測して買ったり売ったりする、それに銀行のお金まで使って、降ろされてしまって。そして私の実の兄がアルコール依存症です。46で亡くなっています。ある温泉地で大きなホテルを経営していました。今でもある立派なホテルです。朝から晩までお酒を飲んで居にくくなったようで、実家に帰ってきて、そこで亡くなりました。ということは私も依存症の可能性があります。ただ幸いなことに私はお酒にあまり強くなくて、飲みすぎは出来ないです。コップに残ったお酒を捨てるのは全く抵抗ありません。依存症になる方はお酒を捨てるなんてことできないですけど、私は平気で捨てられます。ギャンブルに関しては、アメリカに行ってカジノに入ったことはあります、でも長時間あそこに居るなんて私にはできません。単純なゲームですねパチンコにしてもスロットにしても、それを2時間も3時間もやるなんて、到底私の意志の力ではできないので。依存症になるには相当意志の強さがなければできないです。冗談ですが。

三つめは一番大事な所ですが、脳の病気です。どの依存症でも脳に快感を感じるホルモンが大量に分泌されるのです、ドーパミンといいます。最近嬉しいことがあったとします、何か当選したとか、子供が大学受かったとか、恋人から愛を告白されたとか、そういう時にドーパミンがわっと分泌されていい気分になります。通常の時より50%くらいドーパミン分泌が増えます。でも何日も何日もいい気分ではいないですね。アルコールですとドーパミンの分泌が通常の2、3倍に増えます。ものすごい高揚感が得られます。最高の気分を味わえます。私はなったことないからわかりませんが、依存症になるとお酒でドーパミン分泌が300%か400%かに増えるのですね。薬物も同じような効果があります。ギャンブルはどうか。ギャンブルをやっている最中ですと、ドーパミン分泌がなんと10倍くらい、1000%くらい増えるのです。アルコールや薬物よりずっと多いです。これにハマるんです。だから一度勝つと再びやりたくなる。負けて借金が出来てもギャンブルをしていればドーパミンが出ます。ですから一日中やることになってしまう。脳が異常な量の快感ホルモン分泌をする、そこは脳の報酬回路といいます。「報酬回路」が刺激されて異常に大量なドーパミンが分泌するのです、すべての依存症が同じシステムです。依存症は報酬回路を活性化させる病気なのです。報酬回路が出来上がってしまいますと、脳に履歴として残ります。生涯消えません。ということは何か? 何年やめていても、またやるとこの報酬回路が大活躍するのです。ですからたまにお小遣いの範囲でと言っても出来ないんです。やめるしかない病気です。井戸ポンプは長い間使わないでいると水が落ちてしまいます。水が出てこなくなります。そういう時は呼び水を入れます。そうするとまた出るようになりますが、枯れ井戸現象といいます。このように依存症は二度と普通に使う、やることは出来なくなる病気です。その原因は飲みすぎ使いすぎやり過ぎ、その結果脳の報酬回路出来上がってしまうということです。脳に刻まれた報酬回路は何年経っても消えないので、慢性病になります。慢性病で死に至る病です。治療して治さないと死に至ります。お酒を飲み続けているアルコール依存症者の平均寿命はだいたい52、3才と言われます。少し古い統計ですが。私の兄は46才でしたからちょっと早かったです。ギャンブル障害では体は悪くしません。ですが生活が行き詰ってしまって、自殺する人がアルコール依存症の4倍多いです。どちらにしても死に至る病です。どなたか慢性病をお持ちの方おられませんか?高血圧とか糖尿病とか。私は慢性病の問屋みたいなもので高血圧もありますしメニエール病もあります。ですから薬は必ず持って歩いています。治療すれば普通に生活できますが、私の体から高血圧もメニエール病も消えてなくなることはありません。そのように慢性病としての依存症はなくなりませんが、治療すれば必ず回復します。

 

依存症がほかの病気と大きく違うことは、ご本人が自ら病院に行くことはあまりないことです。だいたい誰かが困って連れて行きますね。そこからして違う。病院で何々病と診断されますとショックですよね。ふつうの病気なら診断されますと悩みます。入院しますか、お金はどうしますか、留守の家をどう守りますか、いろいろ考えます。依存症の方は診断を受けても「いやそんなはずはない」。まずそこから始まります。「自分で何とか出来る」「自分で止められる」と主張する方が圧倒的に多いですね。病名をなかなか受け入れられなくて、治療もなかなか受け入れません。自分でなんとかしようとする。でも自分で何とか出来る病気ってありますか?ほとんどないです。新型コロナウィルスも、なんともならないからワクチンを受けにいきます。二階から落ちて骨折したとして、なんとかできますか?できないですね。家庭で何とかできる手当って、バンドエイド止まりです。ですが依存症という病気は、ご本人が自分で何とか出来ると思っている期間が非常に長い病気です。そしてご家族もなかなか最初のうちは病気だという事が受け入れにくいです。自分の育て方が間違っていたんではないか、あれが良くなかったんではないか、ストレスのせいじゃないか。お気持ちはわかるんですけど、最初に申し上げたように親の育て方は全く関係ありません。家族がどのように対応したからこの病気になるという事はありません。ただし回復のためにはご家族はこういう事した方がいいですよっていう話を、これからお話します。

 

まず依存症は回復する病気ですが、それにはご本人が自分は依存症なんだと認めることが大事です。二つ目に自分の力ではどうにもできない病気だということです。虫歯や歯槽膿漏も同じようなもの、歯医者さんだって自分の歯は自分では治せません。まず自分が依存症だと認めることと、自分の力ではどうにもならないことを受け入れることです。ということは誰かほかの人の力を借りなければならないことを、受け入れなければならないです。そしてほどほどの飲酒や、時々のギャンブルなど、適度で抑えることは無理だという事を、きちっと受け入れなければなりません。一人ではしばらく止められるでしょう、でもしばらくたつと。生活を変えないと、同じ生活をしていてただ酒だけギャンブルだけ止めるということは無理なんですよ。生活を変えなければなりません。例えば危ない人には近寄らない、危ない場所には行かない、危ない事はしない、というふうに生活を変えなければいけません。依存症にはほかの病気にはなかなかない、自助グループというのがあります。AAとか断酒会とか、同じ依存症の方が自主的に集まってミーティングを繰り返している自助グループ。そういう所に行かないとほとぼりが冷めちゃうんです。止めていてもほとぼりが冷めて、危ない病気のささやきに乗せられるんです。「たまにやる日があってもいいじゃないか」「こんな楽しい日には一杯くらい飲んでも誰も何とも言わないんじゃないの」とか。「こんな辛い時に一杯くらい飲んで何が悪いの」「一生懸命働いたボーナスもらったから、1万円くらいやってもいいじゃない」。そのように病がささやきます。それに乗せられる患者さんが非常に多いです。さっきの井戸です。呼び水を注されます。また水が流れるようになり、二回目の入院となります。

まとめると、回復するためには自分が依存症だという事を認めて治療を受けること。自分の力以上のものを受け入れて、例えば治療施設に通うとか病院に行くとかすること。適度な飲酒やほどほどのギャンブルには決して戻らないのだということを受け入れること。ほとぼりをさまさないためには、仲間の中に身を置かないと危ないんだということを受け入れる。そして生活を変える。危ない時には助けを求めることが大事です。

 

ところで「共依存症」という言葉があります。これは何か。まず依存症になると考え方が変わります。感情が変わります。感情を偽って生きるようになります。行動も変わります。お金の使い方も変わります。色々なものとの結びつきが変わります。家族の結びつきも変わります。奥さんや子供さんとの関係がガタガタになります。とても嫌なことをお聞きしますが、皆さま依存症者のご家族ですね、あの依存症者に早く消えてほしいと思った方おられますか?もっと聞きます、あの依存症者に殺意を感じた事がある方おられますか?もう一つ、自分が消えちゃいたいと思った方おられますか?…そういう病気です。家族も自分にはどうにもできない病気を何とかしようと思って生きてきたのです。人差し指だけで机を動かすなんてできますか?できっこありません。そういう生活を何年も何年もやってきたのです。子供なんて持たなきゃよかったと思うようになります。それは病気の影響です。依存症者の習慣が変わったように、家族も習慣が変わります。依存症者はいろいろなものを失います。お金を失う、信頼を失う、結びつきを失う。家族はどうなるか。家族は愛情で結びついています、でもそこに依存症者がでると考えが変わります。結婚しなければよかった。早く死んでくれればいいのに。感情が変わります。行動が変わります。習慣が変わります。家族の結びつきが変わります。一番大きいのは、ご家族は依存症者にだけ焦点を当てて生きていくようになります。自分に焦点が当たらなくなるのです。一番前のご夫婦は、息子さんですか?覚醒剤ですか?覚醒剤はドーパミンというホルモンが、日常生活だと40~50%なんですね、お酒だと300%くらいです、覚醒剤だと4~500%、ギャンブルだと1000%くらい分泌するそうです。ただし覚醒剤以外のものはだいたい翌日にはそのホルモンは消えていきます。覚醒剤だと量にもよりますが、4、5日続くんです。その間寝なくて動けます。ずっと麻雀やり続けるとか、寝ないでセックスするとか、トラックの長距離運転で何日も働けるとか。だから危ないんです。一回でも危ないというのは、3日も4日も最高の気分でいられるので、効果が絶大だからです。覚醒剤、ヘロイン、コカインは同じような効果がありますが、覚醒剤が一番長いでしょう。

さてご家族も依存症者と同じような影響をうけます。失うものもあります。ご家族は自分に焦点が当たらなくなりますね。ご家族は依存症者を何とかしようとしているうちに、依存症者と同じように考え方から感情から行動から習慣から結びつきまで変わってしまうし、失うものが出てきます。「共依存症」というのは、病気の影響を受けて、依存症と同じような考え方行動になってしまうことです。「共依存症者」といわれます。最初は配偶者の方、妻の症状だと言われていました。今では家族のだれもが呈する症状だとわかっています。「共」というのは、同じ、一緒、仲間、という意味です。「依存症者と同じ」と言う意味なのです。

 

お手元の資料をご覧ください。1、機能不全家族、問題のある家族の中では、何がおきているか? 依存症だけが問題ではありません。機能不全家族とは家族の機能が不全であるということです。安心感がないと言うのが一つ。いつもガタガタしている。愛情が感じられないということ。依存症者がいれば家族は機能不全になります。暴力を振るう人がいても同じ事になります。しばしば犯罪を犯す人がいても同じ事になります。稼いだお金を人にくれてやってしまう人がいるのも機能不全家族です。安心感がなくて、愛情が感じられなくて、必要なものを与えられないのが機能不全家族です。家族は非常に深い心の傷(トラウマ)を負います。いつも緊張感や不安感がある。皆さまそうじゃなかったですか?親や大人の言動に一貫性がなく予測がつかない。子供の立場で言うと、昨日まで良かったことが今日は良くない事になるのです。家族同士の中が悪いですね。それぞれ自己否定感や罪悪感に満ちている。誰かが誰かを支配し、誰かが支配される関係。対等ではないですね。

2、問題のある家族の中で、どうやって対処するのか。予測がつかない混乱した日常生活を生き抜くために、家族メンバーはそれぞれに何らかの対処方法を見いだして状況を切り抜けていくが、遅かれ早かれ対処しきれなくなる時がやってくる。依存症者の病気が進行するにつれて、事前に対処できなくなる。混乱がひどくなるにつれ、家族全員が危機対応型のライフスタイルを強いられるようになる。予測のつかない危機に備えるのが家族の生活になってしまう。のんびりテレビを見ている場合じゃなくて、いつも緊張、何かが起こったらこうしよう、というのがライフスタイルになります。

3、共依存症とは。精神的な苦痛やストレスの多い家庭環境の中で生き抜くために、家族メンバーが身につけてしまう一連の強迫的な行動パターン。強迫的とは、取りつかれたようなということです。いつも精神的なストレスや苦痛が多いわけです。家族の方は危機対応型のパターンを身につけてそれを取りつかれたようにやる。なかなか変えられない。しかし状況の根本的な解決には至らないのです。お父さんがお酒飲んで叫んでいても、そこから逃げてもお父さんの問題はどうにもならないのです。お子さんが覚醒剤でまた逮捕された、なんとか弁護士を付けて執行猶予をとろうとしますが、繰り返します。根本的な解決にはならないです。危機対応パターンでは解決できないのです。

 

ちょっと話がそれますが、入退院を何度も繰り返している人がいます。依存症専門の病院は3か月入院が普通ですが、退院して家に帰ります。しばらくは静かにしていますが、ほとぼりが冷めると始まってしまいます。何故繰り返すと思いますか?一つには本人がやめる気がないことです。ですが、それでなんとかなるからです。どこに問題があるかといえば、入退院を繰り返しても本人がなにも困らないことです。ご家族が一番困っているんです。本当はご本人が一番困らなきゃいけないのです。なぜ家族がご本人に代わって困るのでしょう?対応を変えなければいけません。入院中の3か月はお酒をのめません。辛抱すればまた家族のもとに帰れます。生活の心配がないのです。ご本人が治療の継続をしなければ、自助グループに行かなければ、再発するのは時間の問題です。ダルクで訓練しても、一人暮らしで再発しないようになるまでは、最低でも2、3年かかります。「自分は依存症という病気で、回復可能だが自分一人の力ではどうにもならなくて、人に助けをもとめる必要性があって、ほとぼりを冷ましてはいけない」。こういうことを身につけて2、3年しらふを続けてからのアパート生活ならいいですね。ただお酒や薬から切り離すだけではだめです、施設や自助グループに通うことが不可欠なのです。そこを通さないと何回も病院を入退院続けるだけです。ご家族が治療費を払って下さることもあれば、公的な費用で払ってもらえる場合もあります。依存症になる方はいろいろ失っている方が多いので、公的な費用(生活保護)が出される場合が多いです。どこのダルクでも多いはずで、これは日本の社会保障制度の良い面です。その場合入院3か月まではアパート家賃も払ってもらえるので、退院後一人のアパートに戻れます。しかしそれでお酒や薬物やギャンブルなしの生活ができると思いますか?非常に難しいです。退院した後その方がどういう生活をするか。慢性疾患ですからしらふの生活を一人ではなかなか困難なんです。しかし公的機関のスタッフと病院との打ち合わせというのは、なかなかないですね。その患者さんが回復するために何が必要か、打ち合わせをもっと綿密にやらないといけないです。ただただ繰り返すだけでは、患者さんにとっても気の毒なことです。結果的に命を落とすだけです。ダルクでしたらご家族とダルク職員の方がどういうことが必要か、綿密な話し合いを何度もして下さい。ただ住む家があって、AAにも断酒会にも行かない生活をしていたら、時間の問題です、病気に誘惑されます。回復のレールに乗せるには、ご家族は何をしていいのか何をしてはいけないのか、ぜひスタッフの方と話し合いして下さい。

 

4 共依存症になるとどうなるか。自分に降りかかる問題を片づけ、それに合わせた生き方をするようになる。生きることを楽しめなくなる。目の前の問題に対処するために習慣的にやってしまう。これじゃいずれやってられなくなります。貯金がゼロになった時かもしれません。皆さんご自身が健康を害した時かもしれません。感情的に限界を超えた時かもしれません。自分の内側に欠けているものを、自分の外側のもので埋めようとする。ご家族が空虚感で一杯、何か外側のもので埋めなければやっていられなくなります。これは依存症者がやっている事と同じ事です。ご家族もお酒を乱用したり薬に手を出したりという事がありえます。消耗しすぎるからです。私がなんとかしなくては、とエネルギーを使いすぎて疲れてしまうのです。出来ないことは出来ないのです。問題は本人に返すしかないのです。ご家族は自分たちの生活と健康を守れる範囲で、愛情は注いで、出来ないことは出来なくてよいのです。他人を操ることによって自分自信の安全と存在価値を得ようとし、自分自身のニーズを満たすことを怠る自己破壊性を示すと同時に、他人のことや他人のニーズを満たすことに病的に執着する。自分に必要なことを自分にやってあげないで、他人様のために一生懸命やり過ぎるということです。これではいつも何かに対して不全感があり、健全な人間関係が維持できない。病気を抱えがちになり、死に至ることもめずらしくない。命に係わる病的な精神状態。どこまで出来るかを見極めないと、危ないということです。

 

5 共依存症の症状。健全な自己肯定感を感じることができない、自分のことが嫌いになるということです。自分と他人との間に上手に境界線を引くことができない。自分を守れないですね。自分の置かれている状況を適切に把握できない。自分の置かれている状況を、節度を持って他人に伝えることができない。自分の希望やニーズを発信すると同時に、他人の希望やニーズを受信するというバランスの取れた関係性がもてない。周りの人達を良かれと思ってコントロールしたり操ろうとしたりする、しかしその動機はあくまで自己満足であり、それゆえに相手に反感をもたれてしまう。そして結果として自分が傷つき、思い通りの結果が得られなかったと傷つけた相手をさらに非難する。恨みがましくなります。相手との境界線があいまいなので、自分の不快感を適切に表現することができず、敵意をつのらせて相手を恨むことになる。自分の中で恨みや怒りの感情を繰り返し再生産しながら、相手を罰したい気持ちや復讐心を抱くことになる。自分の中で恨みや怒りの感情を繰り返し再生産しながら、相手を罰したい気持ちや復讐心を抱くことになる。私も傷ついている母親をみて兄貴に殺意を感じたことがあります。死んでくれたらと思ったことがあります。内面の世界で自分と折り合いがつかず、健康な自意識がもてない。すると理性的に現実と向きあうのも不可能になる。要するに出来ない事を何年も続けてきた挙句自分が嫌になる、そういう自分を尊重できなくなる。自分と折り合いがつかなくなるのです。自分と折り合いがつかない人は他人とも折り合いがつかないです。よく対人関係で苦しむ人がいますが、その人が最初にやるべきことは、自分と折り合いをつけることです。私は私でいいんだと、私に出来ない事があってもいいんだと思えることです。内的な自己認識の歪みや自分自身に対する肯定感や満足感の欠如は、精神的な痛みを生み出す。依存や病的な行動パターンが始まったり、精神疾患や身体の病気を発症することもある。精神的痛みつまりストレスで病気になることがあるということです。自分を見失っていたり、自分自身がどんな人間なのかを相手に伝えられない状態では、親密な人間関係を築くことができない。依存症の影響を受けて同じ家族の中で過ごしていると、その方が共依存症になる。同じような病的な状況になりかねません、ということです。

 

まとめます。依存症は厄介な病です。でも回復できます。提案通りやれば必ず回復できます。回復出来ない人はどうしてかというと、自分の考えでやりたい人です。病気ですから自分の考えでやろうと言うのは無理ですよね。糖尿病の人が、俺は俺の考えで治すんだと言っても、それは無理でしょ。歯が歯槽膿漏でボロボロ抜けている人が、俺は歯医者はいらないといっても治りません。依存症は病気です。この施設には回復した人が何人もいます。私の話もいいですが、実際に回復した人の話を聞くほど大事なものはないと思います。

(質疑応答省略)

文責:伊藤