6月家族会報告
今回の参加者は、13家族17名でした。
はじめに、田中代表が挨拶の中で、「本人の回復には、クリーン、12ステップだけではなく、先行く仲間が近くに居ることが大切です。家族のプログラムにも12ステップが効きます。そして、誰が先行く仲間としてかかわっていくか? 本人が卒業していった家族の方も、家族会にかかわっていっていただきたい。」と、話されました。
続いて、セミナー「家族のかかわり方」に入りました。
ポールさん(相模原ダルク プログラムディレクター)
私は先生でもドクターでもなく、アルコール依存症本人です。30年以上前に神奈川県の国立病院で「12ステップ」に出合い、回復しました。依存症は、社会が生み出した病気です。依存症は、12ステップを学び実践することによって回復する。あんな奴が、あんな酷い奴が! と思われていた人が回復した。それを、アメリカで学んだ。アメリカでは既に80年前から、日本でも40年前から自助グループによる「12ステップ」が行われている。回復の為のプログラムは、100人集めてやるものではない。全体ではなく、一対一の個人相談です。同時に家族のかかわり方が大事です。
家族は依存症と云う病気に巻き込まれています。病気のことを理解し、勉強していくほど、12ステップに全てが入っていることが解ります。新しい生き方、楽になって生きていく為のプログラムです。それは、依存症だけではなく、何かで困っている多くの人たちのプログラムに通じています。
家族の回復の為の3本柱は、依存症と云う病気を理解し、対応法を学び実践し、家族自身の健康を取り戻していくことです。それは同時に、本人の回復にも役立ちます。病気について勉強もしないで、「私が面倒見ないで、誰が面倒みるのよ!」と思っている限り、成功しない。次の失敗に続く。さらに、本人には罪の意識が強まり、ますます荷が重くなっていく。依存症は失敗を重ねていく病気です。
また、家族が「うつ」などになり、精神病院に入院しているケースも多い。例えば、息子がアルコール依存症の場合、「私なんかどうなってもいいのよ!」「お前が甘やかしてきたからだ!」「こんなに一生懸命にやってきたのに、そんなこと言われる筋合いは無い!」と、両親は喧嘩ばかり。心はどんどん病んでいく。新聞記事でアルコール依存症のことを知り、勉強し、「飲まずに居られない病気」だと解り、やっとその答にたどり着く。それは、「放っとけ!」と云うこと。放っておくしか無い。家族は本人を放っとく。本人は家族を放っとく。かつては「酒乱はどうにもならない!」と云われてきた。この迷信は、本人を治療する方法を知らない医者が、そして巻き込まれたままの家族が、自分を守る為に作ってきたものです。「本人は病気なんだ」と言い続けることによって、治療することの重要性の認識が高まっていく。ここで大切なことは、治療の途中で本人に会わないこと。会ってしまうと、本人は、「いつ、仕事を始めよう。いつ、親に借金を返そう。」と考えてしまう。このような本人の罪の意識から出発したやり方では失敗する。お互いが「放っとく」ことによって、それぞれがそれぞれの援助者に繋がり、12ステップに繋がり、それぞれが回復していく。
イネイブリング(共依存関係)は、父親は親の価値観や常識を押しつけ、母親は自責の念にとらわれて「可哀想、辛そう、私の育て方が悪かったのかしら? 誰が面倒見るの? 私が面倒みなきゃ!」となっていく。家族もまた、罪の意識にとらわれていく。そうして、「ステファン・カーブンのドラマトライアングル」と呼ばれる家族の行動パターンを繰り返すようになる。はじめは、世話を焼く「救済者」。それでも良くなって行かないことで、一体どうなってるの!と「迫害者」になり、やがて疲れ果て、何で私だけがこんな目に!と「犠牲者」にと、役割を変えながら、ぐるぐると回り始める。
家族がやるべき、最も大切なことは? この病気は、なってしまって初めて、依存症なんだと云うことに気付く。①原因を探さない。今日一日をどう生きるか。今日一日のことを考える。②責めない、なじらない、説教をしない。本人を奈落の底に突き落としてしまうから。③回復には時間がかかることを受け入れ、じっくり待つこと。一年二年ではない、十年二十年じっくり待つ。
依存症からのそれぞれの回復とは? 依存症とは、本人を真ん中にして、その周りに父親、母親、家族が居る。さらにその周りにその時の仲間、友人、同僚、先生、医者が居る。全部を含めて依存症。本人と、家族と、社会と、それぞれの関係を分けて治療していく。
喧嘩にならずに自分の気持ちを伝えるために、良いコミュニケーションのために、「クラフト(家族の為の対処法)」の練習が必要です。「私」を主語にして言う→「あんた!」と言われた途端に、相手はシャッターを下ろしてしまう。「簡潔」に言う→長く言われても端から聞いてない。「具体的」に言う→「…とても心配なのよ。」このような家族の変化を目の当たりにすると、本人は「何?」となる。これが大事なんです! 彼らはみんな弱い。
アメリカの刑務所での依存症セミナーで見聞きしたこと。「あなたたちは、何でここに居るか解りますか? あなたたちみんなが悪いわけじゃない。依存症になったからです。あなたたちに、罪は無い。しかし、ここを出ても依存症は治らない。治療をしなければ。」 受刑者たちを前に語られた言葉です。
セミナーの後のミーティングでは、息子が刑期を終えてダルクに繋がることになっている家族、同居しながら学んだ対応法を実践している家族、ダルクで回復のプログラムに入っている入寮者の家族など、それぞれの立場での今の心境が語られました。全員で手を繋いで輪になり、「平安の祈り」を唱えて終わりました。家族同士の話しは尽きず、幾組かの家族は個人面談の続く間、1時半頃まで語り合っていました。相模原家族会のパンフレットは、2千部増刷されました。さらに多くの病院、保健所などに置いていただく予定です。 (世話人 広瀬)