<5月家族会報告>

2019年5月18日(土)午後1時半~5時 24名参加(20家族) 初参加1名(1家族)

講師:稗田里香先生(東海大学健康科学部 社会福祉学博士)

 

田中です。稗田先生にはここでは初めて講師をお願いします。長くアルコールの人をサポートされてきましたが、どうにもならないことを何度も経験されて、今のお考えに至ったのではないかなと思います。というのは湘南地区の家族向けの講座においでいただいた時、依存症者の心理は「消えてなくなりたいなのです」とズバリ言って下さいました。私は6か所のダルクを転々した者ですが2回目ダルクを退寮した時、奥さんと3才の子供の家に転がり込んだんです。薬は止まらないし、ダルクもいやだ病院もいやだとグチャグチャでもがいていた時、奥さんに向けて手紙を書いたんです「消えてなくなりたい」と。「あなたには申しわけないが消えてなくなりたい」と。それをまさに稗田先生は講演で言われたのです。それから稗田先生のお話に注目するようになりました。その後先生は法律作り(アルコール健康障害対策基本法)や、アスク(アルコール薬物問題市民協会)の方でも活躍されています。

 

こんにちは稗田です。私は過去、北里東病院のソーシャルワーカーを10年以上しており地元は相模原です。田中さんに会った時地元にすごい回復者がいるものだと思いました。まだお子さんも小さい大変なときだったと思いますが、とても前向きに回復しようと活動しておられるのに感銘をうけました。

今日はお手元にある「クラフト」(印刷資料:CRAFTで学ぶ依存症の治療・回復につなげるためのコミュニケーション)をやってみようと思います。初めての方でも難しいことではありません。依存の状況からなんとか脱出したい時、ご家族のコミュニケーションを効果的にやっていく方法をクラフトといいます。きょうは一時間位話したら、体験していただきたいと思います。そのため書き込み式の資料になっています。

 

クラフトは家族の「コミュニケーション」を変えます。コミュニケーションでは言語表現が3割、あとの7割は非言語だといわれます。会話の他に、態度、視線もコミュニケーションに含みます。ですから意識化しないとコミュニケーションの向上ってできないものです。ことばで伝わることは3割しかないのですから。「痛み」について。依存症に直面した方は、体の痛み、精神的な痛み、社会的な痛みにさらされます。家族や友人との問題、社会のひずみも感じる。もう一つ大事な痛みがあります。田中さんがいった「消えてなくなりたい」という痛みです。自分の存在価値を疑う「生まれてきてよかったんだろうか」「生きている価値あるんだろうか」「死んでなくなりたい」という痛み。そこまでおびやかされてしまう。「スピリチュアルペイン」といいます。霊的な痛み、実存の痛みと言ったりします。依存症の痛みで一番厳しいものです。身体や精神や社会やそういうものには対処できます。しかし実存の痛みは誰も治してくれる人はないのです。自分で取り組むしかないんです。

「スピリチュアルな痛み」は、依存症の回復について一番困難な所です。核になるものです。覚醒剤やめました、アルコールやめました。しかし根っこの「生きづらさ」に対処しなければ依存症は変わりません。

依存症は脳内物質の変化(報酬系)による病気です。そういう脳の変化に家族が太刀打ちするのは出来ないと思います。しかし一番の身近な家族に影響を与えます。子供の成長や発達に影響をおよぼしやすい。世代間連鎖の問題もあります。親のようにならないと思って育ってもなぜか親のようになってしまう問題。依存症の問題は遺伝素質と環境があります。アルコールでは今女性が危機にさらされています。若い女性がとくに飲酒が増えています。女性ターゲットの販売戦略は社会的環境の問題ですね。ご家族も環境の一つと考えられます。その人に巻き込まれるのではなく、その人の「病気に巻き込まれている」と思ったほうがいいです。相手を恨むのはとても気持ちが悪くなります。家族の病をイネイブリングといいますが、脅したりすかしたり、尻拭いしたりして、病気を助けてしまいます。ご家族の共通の苦しみですね。これを少し変えていきましょう。コミュニケーションを考え直してみましょう。

その時に役に立つのが「二等辺三角形の関係」と言います。例えば二人で誰かの悪口を言う場合。この時二人がなぜか協力していますよね。二人で協力して第三者に関心を向け合う状況です。対立する関係ではない。「眺め・語る関係」ともいいます。本人と家族が協力して、どうしたら薬物をやめられるかを眺める関係です。そこで三角形の底辺にある本人と家族とは、同じ目の高さになっています。スピリチュアルな関係で同じ目線の他者という存在が大切だといわれています。ソーシャルワーカーの立場はこれです。医療では医者さんの権威的な関係を使って治すこともありますよね。しかし依存症に関してはフラットな関係のほうが有効です。テーブルの上に問題を置いて眺めてどうしたら止められるんだろうね、と2人で考える関係です。「止めなさい」ではなく「どうしようか」と一緒に眺める。答えを出すではなく考えてもらう関係ですね。自分で回答を見付け出す事がないと解決できない。これは私だけの考えではなく「精神科対話療法」といって、神田橋條治先生の本にあります。とくに依存の課題を持つ人と話すときには、二等辺三角形の関係で話すといいですよと。これは自分の問題にひきつけて実感しましたね。

 

今日の本題は「クラフトで新しい関係を!」です。これはアメリカの精神科教授メイヤーズ博士が開発した依存症者と家族のためのプログラムです。コミュニケーションのトレーニングです。周囲の人が自分のコミュニケーションを変えることで対立を招かず治療へつなげる事が可能になります。すでに持っているけれど効果的に使えていない力を使うようにㇳレーニングします。たとえ治療につながらなくても、問題行動が減ったり、家族がもっと楽に暮らせる効果があるといわれています。アメリカでやられている中では効果のはっきりしている方法です。

 

まず最初にコミュニケーションのパターンを確認します。事例を用意しました。Aさんはアルコール依存と家族の場合。最初のパターンと変更パターンがあります。ロールプレイを実際に演じてみるととても効果的です。その人になりきる。セリフも役者のつもりでやってみましょう。(中略)拍手。とてもいいプレイでしたね。

Aさん最初の感想:最初のパターンはいきなり強く言われて、俺には俺の都合があるんだよと、言い返したくなります。Aさん変更パターンの感想:後のパターンは優しそうな言葉かけなので、喧嘩になりにくいです。気持が安定して自分のことを言っていいという感じ。楽に感じました。

Bさんは薬物の息子と家族。暴力に発展しかねない場合。(中略)拍手。相手の問題というより、どんどん怒りを引き出していますね。「いい加減にしてくれ」のあたりで暴力のサインがでていますね。まずかったなと思い出しました、そういうときは「もう行くわ」と。それでも止まらないようでは危険ラインに踏み込んでいますね。「イラつく」「てめえ」は暴力に繋がるサインです。それが出た時は、即話題を変えることです。その場を離れる事も実は大切なことです。「てめえ」となった時はすぐその場を離れる。どの理由があっても暴力を振るうのは振るった方が悪いです。でも暴力を引き出すことはよくないです。もし家の中で暴れたらその場を立ち去るスキルが大事です。私が関わった方はご夫婦で子供さんがいない方でした。自分のために逃げて行けるホテルを確保していました。自分の空間があるのはいいですねと言っていました。暴力を受けないようにすることと、主導権はこっちが握る。病気に取らせてはいけないです。

 

次にコミュニケーションを変える

  • アイメッセージ。「あなたはなんで電話一本かけてくれないの」を「私はすごく心配なの、今度は電話入れてね」と。「お前はいったいどうするつもりなんだ」を「父さんはお前のこれからのことが気がかりでたまらないんだよ」と。私が心配でぐちゃぐちゃなんだといった、自分の内面を伝えます。では「あなたは家族の事なんか、もうどうでもいいって思っているのね」この言葉をアイメッセージにするには、どう言い換えたらいいでしょう。書いてみて下さい。(中略)「父さんはお前の事が好きなんだよ、みんなで生活していけるようにしようね」拍手。そうですねこの言葉は裏返しにあなたを好きなんだという気持ちがありますね。家族はどうでもいいと言われたら、私は寂しくて悲しくなるわ、一緒にやっていきたいわという気持ちを伝えます。
  • 肯定的な言い方をする。「子供を高校にいかせることもできないわ」を「子供を高校に行かせてあげたいので相談したいの」と。「君の言う事は嘘ばっかり」を「君の言葉祖を信じたいけど、今の話しは無理があるよ」と。では「お母さんが話そうとしているのに、あなたはちっとも聞こうとしない」をどう変えましょうか。書いてみましょう。(中略)「お母さんにとってすごく大切なことなの、聞いてくれるかな」と。
  • 簡潔な言い方をする。伝わりにくい言い方をしていませんか。これは私もなかなかできないことですが、何を言いたいのかわかりやすいように、簡潔に言いましょう。一気に話したい気持ちは分かりますが、何十年も前の話を持ち出しても何を言いたいのか相手に伝わらないです。自分もわからなくなります。「日曜日は飲む量を減らしてほしい、会社を首になるんじゃないかと心配」「あなたが飲みすぎて会社を休む時、私が言いわけ電話をするのはやめる」分けて簡潔に話しましょう。
  • 具体的な行動に言及する。あいまいな言い方をしていませんか。「頼むから母親らしくしてくれ」を「子供の前で酔った姿をみせないでほしい。子供が寝るまで飲まないでほしい」と。母親らしくよりわかりやすいですね。自助グループに行ってほしいのに行ってくれない。「自助グループに行くと言ったのにちっとも行かない。ずるずる先に延ばさないでよ」をどう変えますか。どうしてほしいかを具体的に。(中略)「明日会場まで行く、途中まで一緒にいってあげるわ」いいですね。「木曜日に公民館で会があるから、一緒に行こう」いつ、どこへ、まできちんと決めて提案しましょう。あいまいな約束、例えば離婚する気もないのに離婚すると言ったりするのはいい結果をうみません。
  • 思いやりある発言をする。「相手が辛くなる言い方」を「相手の立場に立った言い方」に。気持ちわかるわ、といいつつ希望を伝えます。
  •  支援を申し出る。「相手を責める言い方」を「支援を申し出る言い方」に。「どうしたら助けになるかしら」という言い方にします。では「やっと外来に通い始めたのにまた飲み始めた。今までの苦労も台無しじゃないかと」これをどう言い換えるか。(中略)「失敗はだれにでもあるわ、やり直しましょう。」「くやしいね、また相談に行こうよ」と。「あなたもがっくりでしょうね。今まで頑張ってきたけのにね。誰でも失敗はあるわ、私も応援するわ」と。再発しやすい病気です。再発も回復の一部といっていいくらい。再発したことを言うより、その後どう支援していくかが大事ですよね。責められたらご本人も隠そうとしますから。

 

更に家族の行動を変える(止まっている場合)。家族から「ごほうび(報酬)を与える」。一生懸命頑張っている所を評価して、ほめる。「相手の行動を正当に評価して、それを言葉にする。褒められるとその行動は強化される」。使用が止まっていたらぜひご褒美をあげましょう。「当たり前の行動の中から最高のご褒美」をあげましょう。取ってつけたような褒めではなく、当たり前のことでいいんです。普段は会話にもならないのに、たまに「普通の会話ができた」時に、「うれしいわーって」喜んでみせる。「仕事にでかけた」これも当たり前といえば当たり前でも、「行ってらっしゃい」と気持ちよく声をかける。「普段より早めに帰ってきた」これも当たり前だけど、「一緒にご飯食べられてうれしいな」って。「さりげなく置いたパンフレットを読んだ気配がある」なら「読んでくれたの、うれしいよ」という感じで。

ある方が「とても恥ずかしくて言えないけど、そこで女優になるんだと思ってやってみます」って。最初は娘さんからキモワルーって言われたそうです。でも何度もやっているうちに、それが本当の自分の気持ちになったそうです。演じているうちに本当の気持ちで言えるようになりましたって。依存症は「行動で回復する」っていいます。頭でわかっていても「足でかせがないと回復はできない」といいます。家族も言ってみないと回復しないのではないでしょうか。

 

更に家族の行動を変える(使用が止まっていない場合)。今までやってきた効果が見られない場合行動のチェックをしてみましょう。これはぜひおうちに帰って自分でやってみましょう。チェックした所を変えるのです。努力してみましょう。

「どれだけ自分のためにならないか言って聞かせる」「家族がどれだけ困っているか訴える」「もう飲まないやらないと約束させる」「約束を守らないことを責める」「目上の人に注意してもらう」「離婚する、家を追い出す、出て行くなどの脅かしを言う」「お酒や薬物を隠したり処分したりする」「迷惑をかけた相手に本人の代わりに謝りに行く」「借金の肩代わりをする」等々。チェックを入れたらこれは自分のためのテキストになります。一日一回は見直して、行動を変えていきましょう。

 

更に家族の行動を変える(使用が止まっていない場合)。さて、イネイブリング、お世話焼きと言います。「良かれと思ってやっているのに結果的に相手の問題を進行させてしまうような行動」のことです。「本人は無責任な行動の報いを受けないで済むので、行動を変える必要を感じない」んです。結果的に病気を進行させてしまいますね、ターニングポイントを、本人の変わるチャンスを摘み取ってしまうわけです。ですからお世話焼きをやめましょう。やめないと家族は疲れ果てるし、本人は同じ行動を続けるだけです。「タフラブ」といいますが、愛を持って見守る、手を出さない。忍耐力をもって止めて行きましょう。

イネイブリングをやめる効果は、本人との関係がよくなります。イネイブリングの種類。「小言・説教・叱責」はやめる。使用中の際は別の機会、別の場所で話しましょう。それで自制がききます。言いたいことは一つに絞って話しましょう。相手にふりまわされず自分のペースで生活して下さい。自分本位で生きていいんです。みんな自分本位で暮らしています。当たり前です。例えば再発してショックだったときは、「薬があなたを苦しませている。そんな姿を見るのはつらいよ」と。薬はあなたと私の共通の敵なんだという姿勢で話します。「世話焼き、尻拭い」はしない。家の中で酔いつぶれたら、そのままにしておきましょう。壊れてたものはそのままに。借金の肩代わりもしない。「行動を管理する」代わりに、見張らない、与えない。暴力からは身を守る。物理的に安全な空間を確保することですね。イネイブリングを止める時は、「どんな理由でこうするのか」という家族の思いを伝えるコミュニケーションをしましょう。これが大事です。依存が止まらない時も「優しい言葉がけ」は大事です。いつもいつも依存に支配されているわけではないので、相手を全否定していないことを伝えます。

 

まとめです。「相手との関係を変えるコミュニケーションがクラフト」です。「相手の困った面ではなくプラス面に注目すること」です。相手には必ず良い面があります。病気が問題であって、人が問題ではないのです。それから「家族も楽になっていい」んです。楽になるなんて立場じゃないわと思っているご家族もいます。でも自分をほめていいんです。自分にご褒美をあげる、自分主体の生活をしていいんです。家族である前に私です。私は時々ちょいサボりをやりますね。

以上は吉田清次先生とASKで出した本をもとにお話ししました。私はASKというNPOの副代表もしていますが、そこで出している「Be!」という雑誌もあります。もっとちゃんとやりたい方はそちらも御覧下さい。

 

家族との一問一答

Q:家族と本人とのコミュニケーションにネガティブな面があったと思います。家族会に来ることで、考え方がポジティブになる効果があるなという印象です。息子が回復してからどう対応するかについても勉強になったと思います。

Q:このあいだテレビに薬の問題で有名人が出ていました。薬は一人では止められない、痛みのわかる仲間が絶対必要ですと言っていました。やっぱり本人がどういう気持ちで回復に向かうか、治療にむきあわないとダメだと思います。うちの息子も、大人ですからね。

A:本人は本人で、家族は家族で回復していかないとですね。

Q:私は主人と来ています。二世帯住宅なんですが、私と主人と本人は薬物問題を話します。孫には知らせたくないです。家族ってどこまででしょう。大勢で見守るのが回復しやすいと思って来ましたが、どのように娘たち夫婦に話したらいいのか。わからないです。息子に問題があって、彼はよそに出ています。娘には本当の事を言っていません。家族会に誘っても娘は関心ももっていません。

A:まず辛いと思っている人からです。問題が起きた時どうするかは、娘さんたちの問題です。べつに堂々として話してもいいじゃないですか。ご両親が生き生きして回復してきたら、娘さんも関心持ってくれるかもしれません。

Q:最近娘のことほめるんですよ。家事やってくれた、今までなかったので、すごいじゃんとほめたら、今までのお母さんと違うなって思うらしいですね。話を聞くようになって。私すごく軽くなりました。あの子も自分の事をやるようになりました。長い事振り回されてきたので。

A:どういうふうに暮らしても病気だから、上手くいかない時はうまくいかないんですよね。振り回されない日常をもっていればいいんです。

Q:私は家族会に来て生長したと思います。あれを見ると全部当てはまって、やらなくていいことをやってきたんだなって。家族会で精神状態を変えないと、やっぱり自分を変えないと周りも変わらないし。うちは娘なんですけど自覚してやってくれればなと思います。

A:自分の問題を切り離す事って大切なんですよね。認知行動療法的に、書いてやってみて。行動を変えることがどれほど大変なことかわかりますよ。

Q:うちの息子が二度目の薬物で保釈中で。どうしても説教臭いやり方をしてしまいました。それで自分のやったことには、なるべく本人からしゃべってもらうようにして、こちらからは近づかないようにと。その中で気づいたことは、薬のせいかそうかわかりませんが、くどくど言い出したら、急に眼がトロンとして(爆笑)聞きたくない様子で。一体どういうことなんだって、アイメッセージで話そうとしたら言葉に詰まったことがあって、そしたら向こうが心配したらしく(笑)息子から言ってくれたんです。こういうコミュニケーションもあるのかって。

A:自分を常に強いものとしてみせないこと、あいまの時間を味わう、これが当たり前のことなんだけど、なかなかね。素晴らしいことですよ、その時間をプレゼントされているのでしょう。あまりにも病気のさなかにある時にはわからないのですね。息子さん良い回復していると思います。

Q:以前クラフトの勉強をしていましたが今日は久しぶりで。ネガティブになってしまいがちなので、自分を前向きにさせてもらうために勉強しました。息子が薬物ですが、今は施設を出ちゃって一人で暮らしています。この子の病気が分かって施設に入るまでは、私も共依存になっていて。未成年だし暴力もあってクラフトを教えてもらって。息子がそれを含めて変わってくれて、それを思うとクラフトは大事だな。教科書を自分の見えるところに置いておきます。

Q:まさしくクラフトの使い方ですね。日常のコミュニケーションがうまくいくし。今みなさんよく書けているし、ロールプレーも上手でしたよ。

A:先月息子が仮釈放で同居しているんですが、試行錯誤の連続で。攻撃的に出れば攻撃的に返ってきます。最近柔らかくなってきて、食器を洗ってくれたんです。悪いねえと言ったら、「俺が好きだからやってるんだ」と。近所の方が居る時に、わざと人前で褒めたりすると、すごい喜んだ顔してるんです。

A:日常の中で褒めるのがポイントですよね。わざと作るとバレちゃうし。褒められて嫌な人はいないですよね。それにアディクションの人たちは色々な意味で責められていますよね。もともとスピリチュアルな穴を埋めるために使っているんだけど、なぜか世間的に悪く思われるし、犯罪のラベルも貼られてしまうし、孤独です。身近な人が褒めてくれるのが一番。家族だからこそ認めてあげられるのは一番いいと思いますね。

Q:私は責める言い方してきたし、問題行動起こしたら否定的な言い方をしてきました。今度飲んだらダルクだよと。決して良くは思っていませんでした。クラフトはとてもいいなと思います。褒める事は大切なんですね。息子とこれからの話をすると、責める事しか頭になくて話し合いにならないんです。責める気持ちを口には出さず、でもオーラがでていたかも。娘が帰ってきたら、あなたはどうしたいのかと、まず聞いてくれるんです。すると話がうまく決着するんです。すごく優しくすると、聞いてくれると嬉しいんじゃないですか。話がしやすくなります。私は最初から攻めるし心を閉じてしまうので。

Q:孤独の病なので、責められることは最高に嫌ですね。わかっているんですよご本人は。でもうまくいかないのは脳の問題なので。責められても本人も困っているんです。そのあたり共感してもらうと、そしたら本人は考えますよ。責めたくなりますよね。でもそれは責める方も辛い。私は母との体験からこれは誰の問題かと常に考えます。お世話したい気持ちはありますが、この問題は誰のものか。巻き込まれないのは、相手を尊重することです。バウンダリー(境界線)を踏み込まない事は大事です。すごくいい経験をされていると思います。

Q:息子が出て来るのが2月なんですが、最近本人からの手紙なんか読んでると、まだ優柔不断があるんですよ。ダルクに入ってくれるとうれしいんですが、本人は頭から入らないと。母ちゃんとも話してるんだけど、楽しいことをしよう、楽しい所に行こうよと言ってます。なかなかむずかしいけど、何とかやっていこうと思っています。

A:2月までまだありますから、本人が今の気持ちでいるかどうか。変化しているかもしれませんね。二人がダルクに来て楽しそうだなって感じられたら、変わるかもしれませんね。ダルク怖いところじゃないよね。

Q:自分達も最初ダルクも知らなくて、弁護士さんが調べてくれて。どうしたらいいんだろうと。話聞いてもらうだけでも自分達助かりました。私たち夫婦が助かっています。聞いてて胸が苦しくなるんですよね。でも少しね、心配は顔にでるといいますから。心配ばっかしちゃって。ああいうところに入ってれば規則正しく生活していると思うけど、どうなってしまっているかねえと。

A:あなたの回復を信じているよ、と言ってあげるだけでいいんじゃないですかね。境界線ちゃんとひいて息子さんは息子さんで。アイメッセージで言っていいと思いますよ。お母さんうれしいわ。私たちがダルクにいってこんなに楽になったんだよって。だからあなたもダルクへと言ってはちょっと。まあこれは私たちのことなんだけどねって。十分考えていると思いますよ。私は嬉しかったと手紙に書いてあげてください。先々は誰もわからないので、2月までプロセスがありますから。息子さんの問題ですから。ダルクにきてよかった。仲間の力ですね。

文責:伊藤