<2月家族会の報告>
30年2月17日 午後1時半~5時 22名(18家族) 参加。
講師:相模原ダルク代表理事 田中秀泰さん 「相模原ダルクのプログラム」
相模原ダルクは現在、新しい人を入れて利用者は40人近くに増えました。今日はプログラムの紹介をします。ここでは月並みな話より、もっと本音の話をしたいと思います。
家族の誰かが薬を使っている、あるいは注射器が出て来たという時は、火事にたとえて考えられます。まずは火を消すべきで、原因探しなど後回しにしなければなりません。親が自分の育て方を責めている場合ではないのです。広く一般的に家族教室では、ポジティブコミュニケーション、家族機能分析、共依存について教えられます。ところが火急の現場で「怒ってはいけない」、「共依存はダメ」と言われても、実際は不可能なのではないでしょうか。薬欲しさに金を出せと罵倒してくる家族相手に、「アイメッセージ」で優しくコミュニケーションなど到底できるはずもありません。しかしだからと言って、病気だからと考えてただ自由にさせることは間違いであって、ダメなものはダメと言わなければいけません。ではどうすればよいのか。
そこで私は自分の経験から、一年は一人歩きのできないダルクを作りました。また年齢、学歴、仕事の経歴など一人一人の違いに合わせたプログラムを用意しました。本当の自分と向き合い回復のプログラムをしっかり身につけるまでには、相応の年数がかかります。そしてどんな方でも非常に長い治療になるため、家族会は決して形だけで終わらせてはいけないと思いました。それは、ダルクに身ひとつで来てもらうことの意味をしっかり説明して、家、職場、友人、家族などは一度手放すことが、実は一番大切なことなのだと伝えることです。
初期施設は町から離れた一戸建てで、入所してから健康な生活サイクルで基礎体力を養います。共同で炊事、洗濯、掃除を行いながら親しみを深めた人間関係の中でルールを学びます。その後は研修スタッフとしてダルクの仕事を経験したり、寮から通うアルバイトなどを始めたりをしながら、いずれ一人で住むアパートに移ります。自然とふれあい、スポーツで体を動かし、エイサー(琉球太鼓)では練習を重ねて人前で演舞します。拍手と歓声を味わい達成感が得られ、そうした中で自尊心が回復していきます。相模原ダルクは「5ステージ制」を採用しています。段階が進むほど生活費が上がり自由度も高まることで自分の回復の到達がわかりやすくなっています。身なりは整えられていき、責任を感じて行動できるように作られています。プログラムでは12ステップを学びます。そもそも人間の回復成長は一生ものですが、ダルクは12ステップを通じてその土台作りをします。これには先生が必要なのですが、本当に12ステップを教えられる人は日本ではそういません。そのため専門のプログラムディレクターをお招きし、個別面談を含めたセミナーを毎月実施しています。ミーティングで、過去どうであったか、何があったか、今どうであるか、を仲間に話します。ワークで、自分の依存の歴史を目に見える形で書き出します。過去を直視しなければ回復はできません。プログラムで最も大切なのは、新しくやってきた仲間の世話をすることです。それは大変なことですが、これを何にも依存せずにやることです。それが自分のためになるのですが、ダルクスタッフが良い回復をする理由はここにあります。
講義ではおもに、交差依存、長期離脱症状を紹介しています。ただ第一の依存行為だけやめたところで、他の依存行為に走っては、結局必ず元の依存に戻ってしまうのです。依存症は根深く、酒やクスリを断絶してからも2、3年の間は、不眠、物忘れ、激しい喜怒哀楽、まとまらない思考などに悩まされます。プログラムに取り組めば必ず治るものなのですが、残念ながら今の医療では誤診に至りやすく、せっかく治療につながった先で処方薬の依存が始まってしまうケースが少なくありません。そこで鍵となるのが「文化」の回復です。つまり生き方を変えることであり、言葉、食事、服装をはじめ徹底的にライフスタイルを見直すことです。それには、正直な生き方をできる場所がなければなりません。それを可能にするのがダルクだと言えます。実家で薬を使いながらそこそこ幸せに暮らしていけることは、絶対にありえません。依存症を抱えた以上は、ダルクが絶対に必要です。
文責:伊藤