<2月家族会の報告>
2017年2月17日
はじめに、世話人より、家族会の活動の報告がありました。1月に開かれた相模原市精神保健福祉センターの依存症家族教室において、相模原ダルク代表の田中さんより、自身の体験と、相模原ダルクの依存症への取り組み、回復へのプログラムが紹介され、続いて、ダルクスタッフのダイキさん、世話人会計・守屋、世話人・広瀬の4名より、本人、家族それぞれの体験が話されました。
セミナーの前に、代表の田中さんより挨拶がありました。
「偶数月の家族会は、ポールさんを講師に家族の方に依存症のことを勉強してもらう回になっています。スタッフから、本人を突き放してくれとか、卒業の近いメンバーの家族には、例え千円足りといえども貸さないでくれとか、いろいろな提案をしますが、それは依存症という病気に備えてのことなので、家族の方も依存症という病気に対して根本的な所で理解してもらうことが、まずは一番です。それには1年~2年位、家族会に足を運んでいただいて、年数を掛けて勉強していただきたい。ここに入寮されればかなりの確率で、断薬、断酒、ギャンブルを止めて、離れることが出来ます。しかし、2年前にここに入った時のことを本人も家族も忘れてしまいます。だからこそ、家族会に足を運んでいただき、今はダルクでスタッフをしているけれど、昔は刑務所に入って大変な目に遭ったとか、そういうことを思い出してもらうことが、大変重要だと思っています。」
今回も初参加の家族の方が来られ、ポールさん自身の自己紹介、体験が語られました。その中で、アルコール依存症だった当時、自助グループに繋がった始めの数年間、家族と、母親と逢わないで自助グループに通い続けたことが回復の第一歩だったと話されました。
続いて、「依存症とはどんな病気か?」というテーマで、ポールさんのセミナーに入りました。
依存症とはどんな病気か?
①重篤で進行性
②慢性の病気
③死に至る病気
依存症は、複雑で非常に個人的なものなので治療を始めるのが難しいというのは大きな間違いです。麻疹と同じ位きちんと説明が出来、予測可能な経過を辿ります。
何でも直ぐ忘れます。それがこの病気です。やっとクリーン3年が経って光が見えてきた。そして再び、薬、アルコール、ギャンブルへ。依存症の特徴というのは、重篤で進行性の病気です。治療しないとドンドン進行します。止めていても進行します。これが、この病気の常識です。私が精神病院に入った後でもそうでした。3か月止めさせられる。中で飲んでいる者もいたけれど、私は飲んでいなかった。それでもこの病気は進行する。そこが一番のポイントです。次に、残念ですけれど、慢性の病気です。喘息だとか糖尿病だとか、そういうものと同じです。一度それになると、治療しないと、必ず死に至る病気です。この病気は、ほとんど糖尿病や高血圧と同じ病気だと言われています。そして、依存症は、複雑で非常に個人的なものなので治療を始めるのが難しいというのは大きな間違いです。麻疹と同じ位きちんと説明が出来、予測可能な経過を辿ります。40年前にアメリカでこういう本が一斉に出て来た。予測が可能です。止めるのは始まりにしか過ぎない。止めるだけだったら、刑務所に行けば5年は止められる。最高5年ですよ。しかし、出所すれば、大体3か月しか持ちません。
どんな人が依存症になるのでしょうか?
・どんな人でもなる可能性は持っています。原因は解りません。
・飲んで、使って、いわゆる酔っ払うこと。そして、そのことから、自分の価値観と行動の葛藤が起こる。
・酔えない人、葛藤に必要不可欠な価値観や善悪の観念の無い人は依存症になりにくい。
何で俺はこんなにアル中になったのだろう? 酒が欲しいのです。ミーティングに行って、研修を受けると、「原因は探さなくていい。」と言われました。原因が無くって病気になる? 何なのだ。「原因探すな。今、どうであったか? 何で最後に精神病院に放り込まれたのか? そこを見た方が解る!」と言われました。飲んで、使って、いわゆる酔っ払うこと。この話しをすると、直ぐギャンブラーは、俺は酔っ払っていないと言うけれど、はっきり酔っ払っているのです。ドーパミンがバァー!と出てね、脳的には。インシュリンがバァー!と出ます。もう普通の人には考えられない位、覚醒剤と同じ位、酔っ払う。お酒飲むと皆酔っ払うじゃないですか。そして、そのことから、自分の価値観と行動の葛藤が起こる。葛藤(かっとう)…難しい日本語です。葛(かつら)と藤(ふじ)は、同じような蔓(つる)植物なのですが、絡まってしまうと、どっちがどっちだか解らなくなってしまう。そして、葛藤が起こることが無ければ依存症は起こらない。その人の中では依存症にはならない。酔えない人、要するに冷淡な人、他人のことなんかどうでもいい人、他人のことなんか気にしない人。酔えない人、葛藤に必要不可欠な価値観や善悪の観念の無い人は依存症になりにくい。一番大事な所です。例えば冷酷な人とか冷淡な人。私も当時、同じ会社に居て一緒に酒を飲んでいても、そういう人は依存症になりません。他人のことは全然気にしない。何か有っても、はははと笑ってお終いなのです。社会的な変質者、相模原の事件もそうです。「この人たちを殺してやることの方が幸せじゃないか。」これは、薬物の依存症による犯行では無い。勿論、一時的には、薬物によって、ある程度判断が無くなって来ることは有るかも知れません。でも、これが常識です。葛藤が有るというのは、どっちにしようか迷う人。私もそうです。さすがに精神病院に入れられた時は止めようと思いました。今度だけは止めようかなと。ところが、また飲んで、また精神病院です。全部、自分で自分を裏切っている。確かに、親父に言われました。お袋にも泣いて頼まれました。精神病院に入れられた時は、自分で止めようと決めた。しかし、死んでも止めるとは全然思っていまかった。ドンドンドンドン裏切っていく。オレオレ詐欺ではないですが、お袋に「また電話」なんて言われました。「海老で鯛を釣る」ってよくありますね。私は三越の特選の売り場に行って、マフラーを買ったり手袋を買ったりしてお袋に贈りました。そうするとお袋に「あんたに何か贈ってもらったら怖いわ。」と言われる。お袋の言っていることがまるっきり解らない。私はお袋のことが大好きでしたから一所懸命にお袋に似合う色を探して贈ったのに。でも、お袋はその頃から解っていたみたいです。それが後で分かった。ごまかそうと思って、金を借りようと思って贈っていたわけでは無いけれど、結果的にそうなってしまうということです。だから、それはいいことじゃない。お袋は「あんたたちは、あんたたちで生活しなさい。」と言いました。本人が親をだまして、金を取る、借りる。まだ親を裏切る。親は、解っていますよ。善悪の観念の無い人は、依存症になりません。私は依存症本人ですから本人の味方です。家族の味方ではない。でも、今は、家族の味方です。あんなに親に苦労させた。2回も親に救急車を呼ばせました。「もう今度、3回目を呼ばれたら終わりだぞ!」と言われたそうです。40年位前かな。あの元気で頑丈なお袋は、最後は90才過ぎまで生きました。
ジョンソン研究所の研究<セントメアリー病院での回復率>
(基本プログラム:急性期の入院治療と、外来での最長2年間のアフターケア)
依存症患者4人のうち3人が最終的に回復している。依存症は、その進行を止め、回復出来る病気です。
40年位前に、はっきり出ています。アメリカにはこういうのが一杯有ります。依存症の回復率の競争が凄い。ある程度、ハッタリも有りますが。アメリカではあちこちに行きました。
入院の間にいろいろなものが出て来ます。これを乗り越えないと、必ず繰り返します。ジョンソン研究所の研究では、1回目の入院治療で「二度と飲まなかった」は6割。再飲酒は4割でした。本人はアル中を認めたくない。私自身も、死んでもアル中にはなりたくなかった。道路で寝転がっているようなオヤジにはなりたくなかった。あんなになってしまうより、刑務所に行った方がましだと思っていました。だから、病院に何回入っても治療に繋がらなかった。しかし、セントメアリー病院では、再飲酒の4割の人たちも、外来での最長2年間のアフターケアで、その半数が断酒し、回復に向かっている。依存症患者4人のうち3人が最終的に回復しています。依存症は、その進行を止め、回復出来る病気なのです。
治療に繋がるには…
依存症者が早い段階で自ら治療に繋がることはまずない。
【治療に繋がるきっかけ】
度重なる危機的状況を経験して、初めて自分の状況に気付かざるを得なくなる。
(たまたま危機的状況が積み重なり頑固な否認の抵抗を打ち破ったことによる)
※この危機がまとまって起こらなかった場合、自分で自分の状況に気付けずに死に至る。
本人が気付くまで待つのは間違い! 本人は病気のために自分で自分の病気に気付くのは難しい。
今、アルコールの話しをしていますが、依存症はみんなアルコールが基礎で、この治療が始まっています。覚醒剤も、ドラッグも、ギャンブラーもそうです。みんな酔っ払う。自分から早く治療に繋がることは無い。あんなのとは違う、と言って。私は肝臓が腫れて「死にますよ」と言われても飲んでいました。依存症だと気が付かなくてもいい。行くところが無くなって、お金も無くなって、病院に行かなければしょうがなくなる。それでいいのです。そこで家族は動く。家族が動いて、病院に入院させる。病院に入っても、本人は周りの人たちを見て「俺はあんなに酷くない」とか、「俺は何でこんな所に居るんだろう」となりますが、やがて、周りの人の話しを聴いているうちに「ひょっとしたら、俺も?」となっていく。本人が気付くまで待つのは間違い! 本人は病気のために自分で自分の病気に気付くのは難しいのです。
病気をくい止めるために
【依存症者】
・自己嫌悪でいっぱい
・自分のしていることを直視していない
・やっていることの大部分に気付いていない ⇒ 病気のために自分で病気に気付けない。
・判断力を失い、感情がわからなくなっている
・生きるために、つらい経験を忘れる
※周りの人が主導権を握り、危機を利用し、介入すること。
「酔ってましぇん!」 家族のせいにする。会社のせいにする。自分で自分を裏切っていることは、本能の深いところでは解っていますが、気が付いていない。親父があんなだったから、とか言って。まだ使っている、まだ飲んでいる。何で自分のことが解らないのだろう、と家族は思う。周りの人が主導権を握り、危機を利用し、介入すること。ここで、ダルク代表らと相談して治療に繋げて行く。一番大事なことは、4人のうち3人は時間が掛かっても回復するということです。(アメリカではアル中の90%以上がマリファナを吸っています。)
家族の3本柱
・依存症という病気について正しく理解する
・適切な対応法を学び、実践できるようになる
・家族自身の心身の健康の維持
家族たちにも、依存症本人たちと同じように自分たちの苦しみが有ります。最初は、家族の3本柱を学ぶことから始まります。依存症と言う病気について正しく理解する。適切な対応法を学び、実践できるようになる。これが、前回(12月家族会)、私の相棒(サトコさん)がやったところです。家族自身の心身の健康の維持。これが家族の3本柱です。
家族の12ステップ
なぜ、ファミリーグループ=家族会があるのか?
12ステップを使う?
被害者な私たちでは?
自分たちには大きな問題がないのでは?
何でファミリーグループか? 12ステップを使ってやる方法は家族会にも有ります。勿論、何人かの方はご存じだと思います。家族の12ステップにも順番が有ります。本人が治療するためにはきちっとしたものが有ります。それが無かったら、私もこんなに繋がらなかった。12ステップというのが有って、これをやれば回復出来る、絶対出来るということを、はっきりと言われました。それで、やってみようと思った。
何故、ファミリーグループに12ステップがいいのか? 何で、私たちがこんなことやらなきゃいけないのか? 被害者は私たちでは? 自分たちには大きな問題は無いのでは? 問題が有るのはあの子ですよ。あの人ですよ。…家族にも、家族自身の回復のための12ステップと言うのが有ります。
・ステップ1:私たちは依存症者に対して無力であり、
生きて行くことがどうにもならなくなったことを認めた。
・ステップ2:私たちは自分より偉大な力が
私たちを正気に戻してくれると信じるようになった。
・ステップ3:私たちは意志と生命を自分で理解している神
ハイヤーパワーの配慮にゆだねる決心をした。
12ステップというのはみんな同じです。私たちは依存症者に対して、無力であり、何の力も無い。依存症を治すこと、回復させること。これには、家族は何の力も無い。生きて行くことがどうにもならなくなった。家族の方です。自分が生きにくくなった。私たちは自分より偉大な力が私たちを正気に戻してくれることを信じるようになった。私たちは狂気か? 正気と言うのは、いろんなことに気が付いて、「あ、それは違うな」というか、少しずつ、あんなことやってきた、こんなこともやってきたけれど、「これは違うな」と考えられることです。これを正気と言います。私たちは自分の今まで生き方です。私の母親もきっとそうだったと思いますが、頭に在るのは息子のことばっかりでしたよ。いつでも最後は、あんな会社に勤めたからだと。自分で言うのも変ですけど、最後はエリートでも何でもありませんでした。会社を首になったらどうしよう。家族は離婚する。どうしよう、なんてね。自分たちの考え方、自分たちの生き方を誰かに委ねないと駄目なのです。もっと言いますと、依存症者にはどうにもならないのです。依存症者に必要なのは、まず、回復出来る施設です。刑務所に何度入っても駄目です。刑務所にはプログラムは有りません。12ステップは精神病院にも有りません。12ステップというのは、私たち本人のための本人たちがやる方法です。偉い先生には12ステップのサポートは出来ません。時々解説する人が出て来ましたけど、ほとんど居ません。
ステップ1:依存症者に対して無力とは?
【依存症者に無力】 とは?
①自分の起こした問題ではない
②コントロール出来ない
③治すことは出来ない
ステップ1は、私たちに考える時間をもたらし、今までのとらわれから解放してくれる。
【生きて行くことがどうにもならなくなった】 とは?
お金、心配、恐れ(警察、死、事件、事故)、不安、怒りで、自分たちの生活が、身体が、精神が、ドンドン不調になった。
家族の方には、力が無いのです。自分の起こした問題では無いわけです。それは息子の問題、自分の起こした問題では無いのです。問題というのは、起こした本人にしか解決出来ないのです。当たり前の話しですけど。借金抱えて、何かして。家族の方の問題ではないのです。あいつが、あの子が、の話しですね。あの子の借金です。あの子の問題です。そして、今までのことをちょっと振り返りますと、もう、それも家族自身がコントロール出来なくなっちゃっているわけです。ある意味では、お金でコントロールしようとしていたのかも知れません。この病気の一番決定的なことは、治すことが出来ないことです。家族がどんなに逆立ちしたって、頑張ったって。無力であり、生きて行くことがどうにもならなくなったということ。日本は総依存の国民です。アジアの国々は。家族の中で生きているっていうか。お金、心配、恐れ、不安。こういうもので、警察の問題が起きる、事件が起きる、もう死ぬか生きるかの話しになります。不安、怒りで、自分たちの生活が、身体が、ドンドン悪くなっていくわけです。生き方がドンドン苦しくなっていきます。これが、第1ステップです。簡単に言うと、「もう、アカン」と。俺たちにはどうしようも出来ないと。そうしたら、どうすりゃいいのか。そして、無力とは? これが一番大事な所です。私たちに考える時間をもたらし、今までのとらわれから解放してくれる。
家族会で話しをした最初の頃、家族の方に怒られましたよ。「母親がね、息子のことを心配してどこが悪いんですか! 誰が心配するんですか、息子のことを!」と怒られたことありましたよ。「何言っているんですか、あなたは!」とは言いません。この病気は進行する病気です。ドンドン悪くなっていきます。
<依存症は進行する病気>
内面の変化が起こる → ライフスタイルに変化が起きる → 人生が崩壊を始める
<依存状態の脳>
快楽信号が前頭葉に伝わる … どうやって暴走を止めるのか?
<依存症とは … 脳の病気(アレルギー)+ 感情の病気(強迫観念)= 依存症>
脳の病気は治療出来ない! これを治療する!
<未治療の依存症者>
【病気によって変わってしまった性格】
嘘・言い訳 自分勝手 そううつ状態 ジャンクな食生活 落ち着かない 無責任
ひきこもり 嫉妬深い 派手な身なり 派手な女性関係 不規則な生活
暴力・乱暴 イライラ 金遣いの荒さ 怒りっぽい・いつも不機嫌
ステップ2:狂気とは?
【狂気】 とは?…正気の反対
同じ行動を繰り返しながら、違った結果を期待すること。
ステップ2は、皆さん正気になって下さい、ということです。同じことを繰り返しながら、「今度は大丈夫なんじゃないか、少し位は大丈夫なんじゃないか」と全然違うことを考える。正しく狂気です。そして、精神病院か刑務所しかない生活になってしまう。依存症者を何とかしようと思ってやってきた行動は一杯有ります。イネイブリングと言います。「24時間一緒に居れば…」とか。夜、眠れないというのは、しょっちゅうです。お金を管理する。最後には「一緒に飲んでみれば解る」なんてね。酒飲んで、後でゲーゲー吐いている。「その姿を見たら解ってくれるんじゃないか」と。
依存症者には解る筈がない。「こいつ、何やっているんだ! バカじゃないのか!」としか思っていない。「私が病気になれば看病してくれるんじゃないか」と。「理想的な妻、母、恋人になれば」と。「そうすれば、彼はきっと依存を止めるんじゃないか」と考えながら、一杯いろんなことをやる。だけれども、この病気はそうではありません。このことは、アメリカでは「三振はアウトですよ」と言います。三振しても、まだバッターボックスに立とうとする。「三振! バッターアウト!」と言われているのに。自分が思うように三回試して駄目なら、何かにゆだねましょう。これが、病気の進行に伴う家族の変化です。本人の問題行動を通して、家族関係がイネイブリング=病気を支える行動になっていきます。依存症の彼のことばっかりを夫婦で話し合う。お姉さんや妹さんや兄貴と、その話しばっかりになる。家族はみんな巻き込まれていきます。家族は、やっぱり認めたくない。依存症者じゃないと信じようとする。何とかこのまま止めてくれればいいのにと思います。止めさせようとする。必ず失敗する。終には憎しみになる。敵意まで生まれてくる。それでもまだ。何とかしようとする。最後には、依存(薬、酒、ギャンブル)をやるかやらないかのことだけにとらわれるようになる。社会生活から後退して行きます。親族とも話しが出来ない。そうなっていくと、精神的、身体的症状が家族の中にも表れてきます。病気を支えるイネイブリングです。ここまで来ると、本人は、親から金をだまして盗り、まだいけるとなります。返すことなど、一回も無い。ここは、ほとんどみんな共通しています。尻拭いする、自分のことを考える余裕が無い。そして、本人の一挙手一投足に振り回されるようになります。本人は全然関係無い。もっと暴れてもっと拗ねて、もっと悪いことをしてやれば、親は何とかしてくれるだろうとなっていきます。ドンドンそうなっていきます。そんな生き方でしか本人は生きられないのです。自分で自分を裏切っていくわけですから。そして、夫婦関係、親子関係が崩れ、悪化していきます。母親と父親の態度が全然違う。「お前が甘やかしたからだ!」何とかしようと必死になっているのに、益々悪化して行きます。
<家族の行動パターン(トライアングル)>
【救済者・迫害者・犠牲者の役割移行】
救済者…犠牲者(本人)を救済してやっている
迫害者…イライラ 怒り 恨み
犠牲者…自己憐憫(私は何なの?)
【正気】とは?…病気を知ること
自分ではどうにもならない。自分の行動を少し変えて行く。ここらが家族会で大事なところです。自分では解らない。自分の子供ですし。家族は、他の人の話しを聴くと、「そういえばそうだなぁ」と思い始める。そこが大事です。関係の無い人に相談したり、親戚に相談したりすれば、心配はしてくれます。しかし、人間とは嫌なもので、上から目線で見られます。「あなた、大変ね。(私の家族は大丈夫よ)」何の相談にもならない。家族会で他の人の話しを聴くことによって、電話が掛かってきても、家のお金が無くなっても、私一人じゃないと思うようになることが大事です。私たちの行動が変わることによって、結果も少しずつ変わっていきます。
【ハイヤーパワー】…自分より偉大な力
私たちは、一人ではどうにもならない。本人もそうです。依存症になったら、一人では絶対に治せない。自分より偉大な力、グループの力、誰かの力、そういうのを借りて元気を付けてもらおうという話しでは有りません。自分が気付く、ということです。気付くことで元気が出ます。やっぱり、本人もそうですが、一人ぼっちです。家族の方も、世の中で私一人じゃないかと思うんですね。私もそうでした。あんな病院に入れられて。そこには、何人もいますけれども、俺は全然こいつらとは違うと思っていました。「何で俺はこんな所に居るのだろう?」しかし、あちこちにミーティングが有って、少しずつ安心していった。他人の言っていることを聴き、学ぶにつれて、変わっていくのです。これは大事なことです。いろんなことを少しずつ少しずつ、ミーティングの場で悩みを打ち明けて行くようになります。言いっ放し、聴きっ放し。何か特別な存在が、心が落ち着けるものが与えてもらえるようになって行きます。これが、グループの力なのです。ハイヤーパワーというと、何か英語で難しいようですが、一人で悩んでいてもどうにもなりませんよ、ということです。大きな力が働いていることが解って、病気のことが解って、いろんなことに気が付いて行くようになります。それが、家族の回復への治療方法としてのミーティング、カウンセリングです。
ステップ3:ハイヤーパワーにゆだねる決心
依存症者が自分自身でやるべきことを代わりにやってきた!
依存症者に対して自分の考えだけで行動してきた!
自分の考え方と生き方を変えてみましょう。本当は、自分の問題ではないのです。いくら病気とはいえ、彼の問題です。彼の代わりにはやらない。どん底を経験しないと、彼も回復しないのです。最後に、親に「もう電話は掛けてくるな」と言われたのがどん底だったのでしょう。ここで相談して、適切な方法を学んで、病気のことを良く解っていく。
<平安の祈り>
神様
私にお与えください
自分に変えられないものを
受け入れる落ち着きを…
変えられるものは
変えていく勇気を
そして、
二つのものを見分ける賢さを…
「神様」は仏さんでも阿弥陀さんでもいいのです。「私にお与えください」「自分に変えられないものを」…私に変えられないもの。もう、ここまで来たら、彼を変えることは出来ないのです。絶対に出来ません。やるとしたら、全部悪い方向に行きます。「受け入れる落ち着きを」…彼は、間違い無く病気なのですから。ありとあらゆる嘘も言います。全部、病気です。頭がそれだけイカれているわけです。必死なんです。そして「変えられるものは変えていく勇気を」…何を変えるのですか?
自分しか変えられません。彼のことは変えられません。「そして、二つの物を見分ける賢さを」…どっちが正しいか、ではありません。
<薬物依存症者の家族の回復の過程>
家庭の外に助けを求める。これが大事です。家庭の中ではどうにもなりません。誰が来ようがどうにもなりません。病気についての正しい知識を持つということは、そういうことです。そして、ここで、オープンでいろんなことを話すわけです。「私にはこんな苦しみが有ります。こんな悩みが有ります。こんなことで困っています。」それが、自分の否認を解くということです。誓う!とかいうことではありません。大したことはないとか、もう少し頑張れるとか、そんな話しでもありません。ここで話すことによって、仲間を作り、孤独感を無くす。これが一番です。それで、適切な対応法を身に付ける。本人への干渉を止める。自分自身に注目し、自分自身の問題に取り組む。お子さんに手が掛かるのに、全然お子さんの方には行けなかった。手袋一枚、マフラー一枚、自分のために一所懸命に、安いものでもいいから買いましょう。自分のために何かをする。現実を見つめる勇気が持ててきます。家族は、本当は解っているけれども、現実を見つめたくなかったのです。現実を認めたくなかったのです。身体的・精神的な変化が現れてきます。新しい生き方への道が開ける。経済的安定への一歩を踏み出すことが出来る。お金はどの病気にも全部絡まっています。
<家族がすること>
①この病気について出来るだけたくさん勉強しましょう。
②新しく学んだ知識に基づいた態度をとりましょう。
③感情的に、巻き込まれていたのだから、感情に影響を受けてきたことを忘れない。
④「もし、家族のことをちょっとでも考えてくれたら」と言わない。
⑤たとえ友人が心配してくれても、建設的な忠告でなければ、耳を傾けない。
⑥家族の自助グループに行きましょう。必要なら、カウンセリングも受けましょう。
⑦お金や、財産をこの病気から守りましょう。
⑧この病気がもたらす現実と向き合いましょう。(たとえ苦痛であっても)
<家族がしてはいけないこと>
①お説教をしたり、叱ったり、責めたり、脅したりはしない。
②依存行為の結果生じたことを隠すことはしない。
③依存行為を正当化するような口実を与えない。
④金銭的な肩代わりはしない。
⑤空約束に耳を傾けない。(本人は約束を守ることが出来ない)
⑥イライラしないように。
⑦問い詰めない。本人はどうせ真実を語らない。
⑧あなた自身や子供のために助けを求めることを、延期し続けない。
(これは、病気の症状で、否認と言われる)
アルコール、薬物、ギャンブルをしていた社会から離れないと駄目です。そういう社会には依存症に繋がるような文化が有ります。そこから離れないと駄目です。何故か? 共依存という言葉は大嫌いですけれども、周りに巻き込まれた人たちが一杯居るわけです。ずっと見ている人たちが。監視している人たちが居る中で、絶対に回復なんかしない。社会に出るとストレスが有る。本人にとって、一番のストレスは家族です。悪いこと位は解っている。依存症者というのは、アメリカでは、アチ―バ―(Achiver)と言われています。悪い意味で、何かを成し遂げる人と言われています。ドンドンそこにハマり込んで行って、それを成し遂げる。だから、今度は回復の方へ向かうと、それも必ず成し遂げられるといいます。依存症の社会から離してダルクに入れる。ミーティングをする。セミナーを聴く。ここに来て、仲間の中で初めて解るのです。こういうことは、一人では絶対出来ません。同じ病気になった仲間と自分の状態を分かち合って、ミーティングをして支え合う。回復していくプロセスを同じようにしていくと、ほとんど回復のペースは同じです。だから、回復と言えるのです。同時に、個々の問題は有ります。個人のカウンセリングを何時もしています。
回復はします。止めることがスタートです。止めることが絶対条件です。止めると必ず離脱症状が出ます。半年から1年位で出て来ます。社会に対する思いや家族に対する思いが有ります。少しずつ正気に戻ってきます。規則正しい生活をして、食事をして、仲間と一緒に風呂に入り、ミーティングに行きます。そうやっていると、少しずつ正気に戻ってきた時が一番苦しいのです。現実を見なければいけないから。いままで、見たくなかったものです。ミーティングをしたり、カウンセリングを受けたりして、少しずつ解ってきます。そうすると苦しくなり、逃げ出そうとします。本人は、「逃げる」とは思っていない。今まで3日さえも止められなかったのに、半年も止められたのだから、1年も止められたのだから、と思うからです。それを乗り越え、更に止め続けます。そして、依存症が自分に対してどんな働きをしたのか分析をします。依存症によって壊れた社会生活を修復していきます。これが、大体2年位です。それから、社会に戻っていきます。
こういう時に、家族の方がお金を渡したりして手を出すと、家族が助けてくれるので、もうプログラムなんかやらなくなってしまう。昔の苦しかった時のことを思い出す、なんていうことをやらなくなる。もう駄目です。プログラムが全然出来ません。だから、家族は手を出さないでください。
相模原ダルクでも、共同生活をやって、苦しいですけれども、私がかつて百円でアンパンを買ったようにやっていかなければ駄目なのです。そこで12ステップというのをやると、依存症によって変えられてしまった性格も回復して行きます。
どうか見守ってあげてください。回復を祈ってあげてください。祈りは通じると言います。
(世話人 広瀬)