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10月家族会報告

2016年10月21日(金)

 参加者は14家族20名。2家族4名が初めて参加されました。

今回は、予定を変更して、相模原ダルク代表の田中秀泰さんのお話しでした。

 

「依存症からの回復 相模原ダルクの活動」

入所者が日々、どういうプログラムに取り組んでいるのかを中心に話されました。

(現在、入所者27名、入院中7名)

日本の薬物に対する取り組み

第一次予防(乱用防止)、第二次予防(乱用期対策)、第三次予防(依存症対策)として行われています。

相模原ダルクでは、第一次予防への取り組みとして、中学校、高校、大学、一般の人たちへの「乱用防止教室」などの講演活動、講演会場での、ダルク入所者による琉球太鼓「エイサー」の演舞披露を行っています。来年度からは、相模原ダルクのニュースレターを発行していく予定です。

第二次予防への取り組みとして、相模原市精神保健福祉センターでの薬物再乱用防止プログラム「FLOW(フロー)」、多摩総合精神保健福祉センターでの認知行動療法「TAMARPP(タマ―プ)」、千葉県八街少年院での薬物離脱指導、更に本人および家族への相談事業を行っています。相談には本人は来ない。まず家族が来て始まります。家族は、何年もの間、本人からの暴力、刑務所収監、服役、病院への入院の繰り返しなど、心理的に追い込まれています。相談事業では、本人の依存症の進行度を測ることから始めます。

第三次予防への取り組みとして、相模原ダルクは2013年10月に相模湖RC(リカバリーセンター)を立ち上げ、翌2014年3月に相模原市中心部にデイケアセンターを開設しました。現在、寮を3カ所確保し、今月中に更に1カ所増やす予定になっています。入所者は、アルコール、覚醒剤、シンナー、大麻、危険ドラッグ、ギャンブルなどの依存症の人たちです。

5(ファイブ)ステージシステム

田中さんは、千葉ダルクのスタッフだった当時、依存症問題に対して先進的な取り組みをしていたアメリカでの研修体験などを通して、新たなダルクの立ち上げの時には、ステージ制を取り入れることを強く思っていたそうです。

<5ステージシステム>

1 生活に慣れる (メンバー)   相模湖RC(リカバリーセンター)

2 役割をこなす (サポート)         〃

3 仲間の手助け (トレーニー)        〃

4 社会性の獲得 (チーフ)    デイケアセンター/ナイトケアセンター

5 人間関係構築 (マネージー)        〃

(ステージを1から5に進んで行くほど、責任と権利は大きくなります。)

相模湖RC(リカバリーセンター)…初期の断薬、1~3ステージ、入寮定員:10名、入寮施設、個室は無く大部屋のみ、毎食自炊、相模湖近くで緑の環境。

一例を挙げれば、自炊は、料理の得意な人にはさせていません。料理の苦手な人が、不味いご飯でも淡々と作っていくこと。その過程で、人と関わらせることに主眼を置いています。生活の場をわざとむさ苦しくすることによって、他の人たち(仲間)を通して自分自身が見えてくるようになってきます。

デイケアセンター…4~5ステージ、定員:10名。

取り組んでいるプログラムは厳しいので、午後のプログラムは「発散の場」として組んでいます。夜は、NA、AA、GAなど、それぞれの自助グループのミーティングに出掛けて行きます。会場へはスタッフの車で送迎しています。

ナイトケアセンター…一人当たり四畳半の個室、定員:6名。

共通プログラム

ミーティング、認知行動療法「SAGARPP(サガ―プ)」、12ステップ、プレジャー。

12ステップについて、田中さんは、相模原ダルクプログラムディレクターであり、家族会のセミナー講師でもあるポールさんが、「12ステップを、日本で一番理解している人です!」と強調されました。ポールさんは長い間、アメリカでの仕事をされていた関係で、先端の依存症治療プログラムに触れ、自らの依存症治療の体験の中で、多くの回復者と交わってきました。12ステップは4、5の「棚卸し」が最も重要です。田中さんは、ポールさんから「4と5は、1年で1ステップだ!」と言われ、

「1~3は9カ月でやれ!」と具体的に指導されたそうです。その時、この人はどんなことでもごまかさず、具体的な数字で答えてくれる人だ、と強く感じたそうです。

プレジャー(仲間と楽しむ)は、焼肉食べ放題など多少お金が掛かっても、普段の生活で厳しい分、利用者の意見を聴き入れながら次の予定を決めています。

社会復帰プログラム

このプログラムは、対象者が6人位に増えてから本格的に取り組む予定です。

リクルートトレーニング…面接作法など。

ウィークリーセッション…その週に起こった出来事を新聞から取り出してセッション(討論)を行う。

ソーシャルミーティング…社会の一員となるための一般常識を身につける。

ダルクに長く居ると、生活保護による居心地の良さに依存してしまい易い。そこから脱け出て、社会に出ていくことが求められています。社会性の向上です。

再発する病気

第一の問題は、最初の依存を止めること(クリーン)。

しかし、止めればそれでいいのか? 最初に依存していたものを止めると、それが切れることによって、更に苦しさが増してきます。それは、処方薬に走る行為(大問題!)、他の依存に走る行為につながる危険をはらんでいます。交差依存(クロスアディクション)です。物質依存×プロセス依存×関係依存。

この第二の問題、生きづらさ、心に空いた穴こそが重要なのです。第一の問題からのクリーンが、他の依存に走らせ、再び本命の依存に戻らせてしまう。ミーティングで、他の人の失敗談を幾度でも聴くことが大切です。

長期離脱症状「PAWS(ポーズ)」を克服する。

思考プロセス障害、情動障害、記憶障害、睡眠障害、身体のバランス障害、ストレス過敏症、として現れます。この長期離脱症状は、過ぎ去るまで我慢するしかありません。仲間からの「皆、そうなんだよ。」の声掛けが救いになります。

日本における地震対策、予想される東京直下型地震や大規模な東南海地震への備えと同じように、必ず来るものとして構えることが大事です。症状は、3カ月~6カ月で最も酷くなります。しかし、どんなに辛くても2年頑張れば楽になってきます。長期離脱症状は、その辛さを仲間に正直に話すことによって回復していきます。とは言え、2年間は何をしてもイライラすると言います。そんな時に、医者に行ったりして抗うつ剤などの処方薬を出されれば、その辛さから処方薬依存に走り、交差依存を経て、再び、本命の依存を再発させてしまうのです。

田中さんは、その辛さのただ中に在った時、ポールさんから「熱が出てもポーズだよ。」と言われ、「その辛さをミーティングで言え! 医者の処方薬に頼るな!」と厳しく指導されたそうです。ダルクから早く出たい! 早く元の仕事に戻りたい!

という気持ちが危険なのです。クリーン2年になれば楽になるので、それまでは何としても、あと少しだと騙しながらでもクリーンを続けさせることです。大事なことは、医者に行かせないこと、処方薬に頼らせないことです。

このことによって、相模原ダルクでは、回復率が95%になっています。

文化の回復

「依存の文化」の中で身に付けた(学んだ)ものは、徹底して見直していきます。

1.言葉/話すこと 2.食べ物/食事 3.服装/身の回り品 4.価値観/道徳観

5.仕事/遊び    6.家族関係  7.セックス        8.読み物/音楽/テレビ

この1~8の全ての「文化」を変えて行きます。「依存の文化」を「回復の文化」に変えて行くのです。例えば、中学校に講演活動の運転スタッフとして行く場合でも、場所や内容に合わせて、今まででは着慣れていない服でも着て行きます。形だけでも「回復の文化」に変えて行くところからスタートします。相模原ダルクでは、徹底して変えて行きますので、家族の方たちもそこを見て欲しい、とのことでした。

 

最後に、今年始めの町田寮の開設のために、家族会の皆さんにご協力いただいた、献金の総額が、32万5千円に上ったことが報告されました。

 

その後にお話しされた体験談の中で、多摩総での千葉ダルクの白川さんとの出会い、沖縄ガイアでのポールさんとの出会いと教えが、その後の依存症回復、更に相模原ダルクの立ち上げにとっても、非常に大きな力になったことを、幾度も声を詰まらせながら話されました。その姿が強く印象に残りました。

                                     (世話人 広瀬)